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    地震に『強い墓』と『弱い墓』―構造的な違いとは

    2024年の能登半島地震では、多くの墓石が倒壊しました。しかし、同じ墓地の中でも、倒れた墓石と無事だった墓石が混在していました。何が明暗を分けたのでしょうか?

    春のお彼岸を前に、「強い墓」と「弱い墓」の構造的な違いを、技術的な視点から解説します。

    ◇ お墓ディレクター1級:お墓のプロの証、1級取得者は全国で2桁
    ◇ 墓地管理士:お墓、納骨堂、永代供養墓の法律の専門家
    (一社)日本石材産業協会正会員、兵庫県支部理事
    ◇ 石材加工技能士1級:石の加工の技能を表する国家資格
    ◇ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
    ◇ 「地震に強いお墓」施工店

    おおきた石材店

    昭和の初めより三代続く、兵庫県豊岡市の小さな石材店。震度7の地震でも倒れなかった「地震に強いお墓」と特許技術「雨漏りしないお墓、信頼棺」の正規代理店。百年後に残るお墓を作っています。

    目次

    なぜ墓石は倒れるのか?

    一般的な和型墓石は、複数の石材を積み上げた構造で、竿石(一番上の石)は地面から1.5〜2メートルの高さになります。重心が高く、横からの力(地震の揺れ)に弱いのです。

    対策する部分は多くありますが、最初にポイントとなる部分は石の基礎部分と石材同士の接合部です。ここが緩んだり外れたりすると、一気に倒壊します。

    「弱い墓」の特徴

    1. 石を積んだだけの墓石

    30年以上前の墓石の多くは、石を重ねただけで接着されていません。摩擦だけで支えているため、揺れで簡単にずれてしまいます。現在の施工基準からすると、「施工不良」となりますが、建設基準がない「お墓」の世界で、30年前のお墓は仕方がない部分でもあります。

    2. 基礎工事が不十分

    基礎コンクリートがない、厚さが不足している、鉄筋が入っていないなど、基礎が弱い墓石は地震に耐えられません。

    この部分も住宅は、建築基準法がありますが、お墓はその基準がありません。ですから、10年くらい前になりますか、デフレ時代に「一日でお墓を建てる石屋さん」がありましたが、そのお墓はまさに基礎コンクリートはありません。

    3. 接着剤の劣化

    セメントやモルタルは経年劣化で接着力が低下します。接合部に隙間ができていたら、危険信号です。とくに、セメントは本来接着力がありません。上と下の石を固定しているセメントは一度分離したら、ただ石の上に石が乗っている状態よりもさらに不安定になる場合があります。

    「強い墓」の技術

    1. 免震パット(シリコン製)

    石材と石材の間に、シリコン製の免震パットを挟む工法です。

    重要なポイント
    免震パット自体には接着力はありません。地震の揺れを軽減する効果は、石材が完全に接着されている状態で初めて発揮されます。つまり、接着剤の性能が非常に重要です。

    代表的な製品
    絆、安震、クッションマットなど

    2. ブチルゴム

    特徴

    • それ自体に高い接着効果がある
    • 硬化しない(柔軟性を保つ)
    • 完全にシールされた環境なら、長期間劣化しないことが証明されている

    免震パットとは異なり、ブチルゴム自体が接着材として機能します。耐震接着剤と併用することで高い性能を発揮する製品です。

    3. 耐震接着剤

    エポキシ系接着剤

    非常に強力で経年劣化しにくいですが、一度接着すると分解が困難です。セメント系よりも耐震性(地震に耐える)は優れますが、免震性(地震の揺れを吸収する)は、ほぼありません。

    弾性接着剤

    硬化後も柔軟性を保ち、揺れを吸収します。免震パット、プチルゴムと併用することが多く、この接着剤の性能が免震効果を左右します。また接着剤自体も性能に差があり、高性能な接着剤は高額である場合が多いです。

    4. ステンレス芯棒の使用

    石材に穴を開け、ステンレス製の芯棒を挿入して上下の石材を連結します。

    長い芯棒(上から下まで貫通)の注意点

    上から下まで一本のステンレス製の棒(ボルト)で固定するので、しっかり固定されると強固ですが、加工精度が求められ、施工も難しいという注意点があります。

    リスク

    • 接着の程度によっては、竿石(一番上の石)が回転してしまう可能性がある
    • 加工精度が低いと施工が非常に困難
    • むしろ施工不良が発生するリスクもある

    短い芯棒による固定(推奨される方法)

    方法
    短い芯棒を2本ずつ、それぞれの上下の石に接着して固定します。数本のステンレス芯棒で全体を固定する方法です。本来この方法は、免震、耐震性を求めるためであり、同時に横揺れによる石のズレを防ぐ効果を期待するものです。

    メリット

    • 横ずれ防止の効果が高い
    • 1本の芯棒では石が回転してしまうリスクがあるが、複数本なら抑止効果が高い
    • 加工精度は求められるが、施工が比較的容易

    5. 基礎工事の強化

    鉄筋コンクリート基礎

    標準的な仕様

    • 厚さ:15〜20cm以上
    • 鉄筋:直径10〜13mmの鉄筋を格子状に配置
    • コンクリート強度:18~24N/mm²以上

    地盤改良:関根石材店式トップベース工法

    トップベース工法とは
    もともとは土木・建築工事の地盤改良手法ですが、福島県須賀川市の関根石材店の代表、関根哲也氏が長年の研究と改良を重ね、お墓専用の地盤改良工法として確立しました。

    施工方法

    1. 深い掘削
      コンクリート天場より700〜750mm深く掘削します。これが最低限必要な深さです。
    2. 砕石の転圧
      40mm〜0mmの砕石を少しずつ投入し、ランマー(転圧機械)でしっかりと踏み固めます。一度に大量に入れず、少量ずつ転圧を繰り返すことが重要です。
    3. 独楽(コマ)の設置
      直径330mm、高さ300mm程度のコンクリート製の「独楽(コマ)」を設置します。下面には強化プラスチック製の先端が付いています。
    4. 砕石の充填
      独楽同士の外周部分を当てるように配置し、隙間に砕石を強力に詰め込みます。ランマーで転圧しても独楽が動かない状態まで締め固めます。
    5. 水平調整
      独楽の高さが10mm以内に揃うよう調整します。
    6. 基礎コンクリート
      独楽を固定せず、その上に鉄筋コンクリート基礎(厚さ150mm、呼び強度24)を施工します。独楽自体を固定しないことが重要です。

    トップベース工法の6つのメリット

    1. 極めて軟弱な地盤でも、上載荷重を安全に支える
    2. 沈下量を制御し、不同沈下を防止
    3. 吸振・防震効果により、耐震性が期待できる
    4. 施工が簡単で、特別な機械を必要としない
    5. 建物内での施工も可能
    6. 杭基礎に比べ経済的

    地震に強い理由
    独楽の特殊な形状と周囲の砕石が、地震の揺れを受けた際に独楽が自転することで振動を吸収。揺れを大きく減衰させ、上部のコンクリートおよび墓石に伝える地震の力を軽減します。

    実績
    東日本大震災で、ほとんどのお墓が倒れた墓地の中で、トップベース工法で建てられたお墓だけが倒壊を免れたという事実が、その効果を証明しています。

    6. 重心を低くする設計

    竿石のサイズを抑える、横長のデザインを採用する、洋型墓石(背が低い)を選択するなど、重心を低くすることで構造的に地震に強くなります。

    既存のお墓の耐震補強

    補強方法1:ブチルゴムと弾性接着剤による組み直し

    手順

    1. 石材を一度解体
    2. 接合面をきれいに清掃
    3. ブチルゴムと弾性接着剤を併用して設置
    4. 目地シールで完全にシール

    費用の目安:15万円〜40万円
    期間:1〜2日

    ポイント
    ブチルゴム自体に接着効果があり、弾性接着剤と併用することで、接着力と免震効果の両方を得られます。最後に目地シールで完全にシールすることで、ブチルゴムの劣化を防ぎます。

    補強方法2:ステンレス芯棒の追加

    短い芯棒を複数本使用する方法で、横ずれを防止します。

    費用の目安:10万円〜30万円

    補強方法3:基礎の補強

    既存の基礎が弱い場合、周囲に新たなコンクリートを打設します。トップベース工法による地盤改良も検討できます。

    費用の目安:30万円〜60万円

    補強の優先順位

    優先度:高

    1. 明らかな傾きやぐらつきの修正
    2. 竿石の固定(最も倒れやすい)
    3. ブチルゴムと弾性接着剤による組み直し

    優先度:中

    1. 中台・上台の固定
    2. ステンレス芯棒の追加

    優先度:低

    1. 基礎の補強
    2. 外柵の固定

    耐震施工の費用

    新しく墓石を建てる場合、耐震施工の追加費用は15万円〜40万円程度です。トップベース工法を含めると、さらに費用が加算されますが、地震で倒壊して建て直す費用を考えると、最初から耐震施工をしておく方が結果的に安く済みます。

    石材店の選び方

    チェックポイント

    1. 耐震施工の実績を聞く
    2. 具体的な工法を説明できるか(使用する材料、施工手順、効果)
    3. 保証内容を確認(施工保証の年数、地震による損傷の保証範囲)
    4. 過去の地震での実績(能登半島地震や東日本大震災での被害状況)

    誠実な石材店なら、正直に答えてくれるはずです。

    春のお彼岸は「耐震点検」の好機

    お墓参りの際、以下をチェックしてみてください。

    □ 墓石が傾いていないか
    □ 石材の接合部に隙間はないか
    □ 手で押してぐらつかないか
    □ ひび割れや欠けはないか
    □ 地盤に沈下の兆候はないか

    1つでも気になる点があれば、石材店に相談しましょう。

    まとめ

    「強い墓」と「弱い墓」を分けるのは、基礎、接着、免震、そして施工の質です。特に、地盤からしっかりと対策されたトップベース工法は、地震大国日本において最も信頼できる工法の一つです。

    お墓は家族の歴史を刻み、次の世代へつなぐ大切な場所です。地震に負けない「強い墓」で、その役割をしっかりと果たせるようにしたいものです。


    参考:主な免震・耐震材料と工法

    • 免震パット(シリコン製):絆、安震、クッションマット
    • ブチルゴム:高い接着効果、硬化しない
    • 耐震接着剤:エポキシ系、弾性接着剤
    • 金具類:ステンレス芯棒(短い芯棒を複数本使用)
    • 基礎工法:関根石材店式トップベース工法

    具体的な製品や工法については、石材店にお問い合わせください。

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    この記事を書いた人

    兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー。兵庫県北部での唯一の「お墓ディレクター1級」取得。供養のプロ、墓地管理士。「お墓」に関する記事を1500以上執筆中。現在お墓に関する記事を365日毎日更新継続中。(一日怪しい日があるが。。。)地震に強いお墓と雨漏りしないお墓を建てています。

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