こんにちは。兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー、おおきた石材店の大北和彦です。
春のお彼岸や、お盆前のお墓掃除のときに、こんなことに気づく方がいます。
「お墓の文字の色が、いつの間にか薄くなっている」「家紋の金色がくすんで、ほとんど見えなくなった」
じわじわと進む変化なので、毎回のお参りでは気づきにくい。久しぶりに来た親族が「あれ、こんなに色が落ちてたっけ」と指摘して初めて気づく、というケースも多いです。
今日は、なぜ色が落ちるのか、どのタイミングで入れ直すのか、どこに頼めばいいのかを整理します。
そもそも、どこに色が入っているのか
最初に、お墓の文字や彫刻と「色」の関係を整理しておきます。
お墓に刻まれた文字や家紋は、石を彫って凹みを作ったものです。その凹みに塗料を充填することで、文字や家紋を見やすくするのが「色入れ」です。
おおきた石材店では、正面の文字(「○○家之墓」など)は基本的に色を入れていません。彫刻の深さと仕上げで十分に見える状態にすることにこだわっているからです。色は塗料であるため、いつか必ず剥げます。剥げた状態は、色を入れていないお墓より見栄えが悪くなります。
一方、裏面の文字(建立者名・没年月日など)・副碑の文字・家紋彫刻については、彫りが見えにくくなりやすいため、色を入れることを原則としています。
つまり、色が落ちてくる問題が起きやすいのは、裏面・副碑・家紋の部分です。また、他の石材店が建てたお墓では、正面文字に白・黒・金色の色が入っているケースも多く、そちらの色落ちも同じ問題として起きます。
なぜ色は落ちるのか——3つの原因
① 紫外線による塗料の劣化
塗料の主成分は有機化合物です。紫外線は有機物の化学結合を切断する作用があり、塗料の分子構造を少しずつ破壊します。表面からじわじわと分解が進み、色が薄くなる・白く濁る・粉状になって崩れる(チョーキング)という変化が起きます。
特に金色の塗料は紫外線に弱く、数年で輝きが失われやすい素材です。南向きの日当たりの良い墓地ほど、紫外線の蓄積が多くなり、劣化が早く進みます。
② 熱膨張・収縮の繰り返しによる剥離
石と塗料は、熱による膨張・収縮の度合いが異なります。石(御影石)と塗料は異なる素材であり、温度変化のたびにわずかに異なる動きをします。夏の高温と冬の低温、昼と夜の温度差——これが何千回・何万回と繰り返されることで、石と塗料の界面(接着面)に微細なひずみが蓄積し、やがて剥離が始まります。
特に石の凹みの縁(彫刻のエッジ部分)は応力が集中しやすく、ここから剥がれが始まることが多いです。「縁から少しずつ色が欠けてきた」という状態がこれです。
③ 雨水の浸透・凍結
塗料と石の界面に雨水が浸み込み、それが冬季に凍結すると体積が膨張して塗料を内側から押し広げます。但馬・豊岡は冬の気温が氷点下になる日が多く、凍結融解のサイクルが繰り返される地域です。これが塗料の剥離を加速させる原因のひとつになっています。
また、石の表面を流れる雨水が塗料を少しずつ洗い流す「水侵食」も、長年にわたって色落ちを進める要因です。
色落ちの速さは「何で塗られているか」で大きく変わる
色入れに使われる塗料の種類によって、耐久性は大きく異なります。
一般的な油性塗料は比較的安価ですが、紫外線・熱・水に対する耐久性は高くありません。施工後5〜10年で目立った色落ちが起きることがあります。
一方、2液型ウレタン塗料やエポキシ系塗料は耐久性が高く、適切に施工されれば10〜15年以上持つことがあります。金色には金箔を使う方法もありますが、金箔は紫外線に弱く、屋外では数年で輝きが失われやすい素材です。
「どんな塗料で入れ直すか」は、次の色入れの持ちに直結します。安価な塗料で入れ直しても、また数年で同じ問題が起きます。
色入れ直しのタイミング——「部分的に剥げ始めたとき」が最適
色入れ直しの依頼タイミングとして、最も適切なのは「部分的に剥げ始めた時期」です。
色が完全に落ちてから依頼するよりも、この段階の方が理由があります。まず、残っている古い塗料を一度しっかり除去することが、新しい塗料の密着性を高める上で重要です。残存塗料の除去がしやすい状態は、完全に剥落した後よりも「まだ残っているが剥がれ始めた」段階の方が作業しやすいことがあります。
また、色が部分的に剥げた状態は見た目がよくありません。「家紋の右半分だけ金色が残っている」状態のままお盆の家族参拝を迎えるより、夏前の5〜6月に入れ直しておく方が、気持ちよくお迎えできます。
施工の観点からも、5〜6月は気温が安定していて塗料の乾燥・硬化に適した時期です。真夏の高温下では塗料が急激に乾燥して仕上がりに影響することがあり、施工には向きません。
色入れ直しを自分でやってもいいか
ホームセンターで塗料を買って自分で色入れ直しをする方もいます。費用は安く済みますが、いくつかの注意が必要です。
まず、古い塗料の除去が不完全だと、新しい塗料の密着が悪く、すぐに剥がれます。特に凹みの奥に残った古い塗料は、細いブラシで根気よく除去する必要があります。
次に、塗料の選択です。一般的な家庭用塗料は耐候性が低く、屋外の石に使うには不十分なことが多い。使う前に「屋外石材用」「耐候性」「耐UV」を確認してください。
家紋の金色については、繊細な細部まで均一に仕上げるのは技術が必要です。ムラや塗りはみ出しが残ると、かえって見栄えが悪くなります。家紋の色入れ直しは、プロに依頼することをお勧めします。
「自分でやってみたが、うまくいかなかった」という依頼も実際に受けることがあります。その場合、自分で入れた塗料の除去から作業が必要になり、費用が余計にかかることがあります。
まず写真を送ってください
「どの程度の状態か」「入れ直しが必要かどうか」は、写真を見れば概ねわかります。LINEで写真を送っていただければ、現状を確認した上でお答えします。費用の目安もお伝えできます。
お盆前の7・8月は依頼が集中しやすい時期です。5〜6月のうちに動いておくと、余裕を持って仕上げることができます。
まとめ
- 色落ちの3大原因は紫外線による塗料劣化・熱膨張収縮による剥離・雨水の浸透と凍結。但馬・豊岡の冬の凍結融解サイクルは特に剥離を加速させる
- おおきた石材店は正面文字に基本的に色を入れない。色落ちが起きやすいのは裏面・副碑・家紋の部分
- 使用する塗料の種類で耐久性は大きく変わる。安価な塗料での入れ直しは短期間で再劣化する
- 入れ直しの最適タイミングは「部分的に剥げ始めたとき」。完全に落ちてからでは遅い
- 施工に適した時期は5〜6月。真夏の高温下は塗料の乾燥が早すぎて仕上がりに影響する
- 家紋の色入れ直しはムラが出やすく難しい場合、プロへの依頼を。
- お盆前の繁忙期を避けるために、5〜6月中に写真でご相談を

お墓ディレクターの視点
ときどき、施主様が自分で色を入れたと思われるお墓を見かけることがあります。彫刻の縁から明らかにはみ出して塗ってある状態で、見た目が悪く、文字も読みにくくなっていて、入れない方がよかったかもしれない、という仕上がりになっています。手先が器用で丁寧にできる方はご自身でされるのも良いと思いますが、自信がない方はプロに依頼される方が結果的にきれいに仕上がります。費用はそれほど高くはありません。迷ったら、まず写真を送ってください。
















