兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー

石に文字を刻む

  
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石に文字を刻む

お墓というのは、どこまでが石で、どこからがお墓になるのでしょうか?


◇兵庫県豊岡市のお墓のアドバイザー大北和彦です

兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー、おおきた石材店です。

☑ 兵庫県北部で唯一の「お墓ディレクター1級」
☑ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
☑ (一社)日本石材産業協会正会員
☑ お墓の法律のプロ、「墓地管理士」取得

おおきた石材店はお墓のことを全く知らない人にも、お墓を建てる時に大事なことをわかりやすくお伝えすることを第一に考えて情報発信しています。


おおきた石材店では、自社でお墓に文字を刻んでおります。もっと正確に説明すると、
「私が文字を刻んでいる」お墓です。

毎日、毎日、お墓に文字を刻み続けております。実は、私は子供の頃から、先代の父に言われて、
お墓の文字彫刻の一部をしておりました。

多分、小学校3,4年くらいからやっていたと思います。

お墓に文字を刻み続ける

最初は何をやっているのかわかっていなかったように思います。
多分最初は母がやっていたような気がします。多分母もあまり得意ではなかったのでしょう。

細かい仕事が得意というか、好きだった私に白羽の矢が立ったのかどうかわかりませんが、
文字の原稿をお墓の石のゴムシートに写して、それをカットする仕事をずいぶん長くやっていました。

特に、副碑とか、戒名碑と呼ばれる石に亡くなった方の戒名(死後の名前ですね)と亡くなった日にち、生前の名前(俗名と呼びます)、そして、亡くなった時の年齢を石に刻みます。

これをそのまま、石に写す作業があります。

文字を石に写す

非常に根気が必要で、おそらくですが、こういった仕事があまり得意ではない人にとっては
苦難でしかない、ような気がします。私は比較的、苦痛ではなかったように思います。

こうやって、石に張り付けたゴムシートに文字を転写し、文字の輪郭を刻み、彫刻する部分のみ、ゴムシートを取り除き、その石の表面が見えている部分を彫刻します。

彫刻するのも、とても根気と粘りが必要です。

ブラスト彫刻と手掘り彫刻

昔は、ノミという道具で石に文字を刻んでいました。とても高等な技能が必要で、現在ではそれが出来る人はほとんどいません。ノミで石に文字を刻むという技術を取得していたのは、おおよそ私の父世代まででした。


ただ、ごくまれにその技能を若いころ取得されている方がいて、その一人が私とは同い年でもある、滋賀県の石職人さんの兼子裕司さんです。

創業天保9年 石大 兼子石材店

仏像などを彫刻をする職人さんはまだ少なくなったとはいえ、いらっしゃいますが、文字を手で彫刻される石職人さんはほとんどいないと聞いています。
兼子さんの彫刻する「薬研堀り」という手で彫刻する文字はほんとに素晴らしく、美しく、かっこいいんです。ほんとにこの文字は芸術的な美しさ。

ある程度ブラスト彫刻で彫り、最後の仕上げだけ手彫りで仕上げるという彫り方を「さらい彫り」と言いますが、それが出来る石職人さんはまだいらっしゃいます。私も以前依頼したことがあるのですが、この薬研堀りだけはその方法ではダメなのです。文字の底の美しさ、造形美がなかなか出せないのです。

最初から最後まで手で掘る

昔からの教えられた手法で掘らないと、この美しい梵字の薬研掘りはできません。それが出来る稀有の人、稀有の石職人さんです。 兼子さんの薬研堀り彫刻のお墓を建てられる人はほんとに羨ましいですね。

この美しさを是非とも、堪能してください。


私は兼子さんほどの文字彫刻の技能がありませんが、それでも、精魂込めて、文字彫刻はさせていただいています。

※ 現代のお墓の文字は99%「薬研堀り」ではありません。「薬研堀り」はかなり特殊な彫刻技法です。現代ではほぼなくなりつつある伝統技法でもあります。何とか残してほしいですね。

それで、最初の命題となります。

「お墓というのは、どこまでが石でどこからがお墓なのでしょうか?」

この命題の一つの答えは私は「文字彫刻」だと考えます。

お墓の形をしていても、それは「お墓」ではない。あくまで、お墓になる予定の石造物です。そういった石造物は石材店に行けば、たくさんあります。ほんとにたくさん。でも
それらは、「お墓」ではないのです。

この石の石造物を気に入っていただいて、お墓として使うと契約していただいて、文字を彫刻したときが、「石造物がお墓になった」時だと考えます。

ですから、お墓にランクアップするための過程が「石に文字を刻む」という行為なのだと考えます。

「お墓」にする際の心構え

私はサンドブラストによる文字彫刻をさせていただいています。でも、それだけに、文字を刻むという行為にはこだわってお墓を作っています。

掘る文字は人が書いた文字を使う

最近のお墓の文字はずいぶんコンピュータの活字が増えてきました。素人の方には区別できないかもしれませんが、活字、つまり、すべてデザインされた文字が増えています。
でも、私は今のところ、書家の先生が書かれた文字、という部分を大事にしています。

彫刻する文字の切り抜きも人の手で

文字だけではなく、その文字の切り抜き(ゴムシートから文字を切り出す工程)もカッティングプロッタという機械でカットしている石材店が増えてきています。
おおきた石材店でも100%手で切った文字、と断言できません。きわめて多忙な際には、ごく稀にカットしてもらったものを使ったこともあります。ですが、可能な限り、手でカットした文字を彫刻することにこだわっています。石がお墓に格上げされる際の文字彫刻はできうる限り、人の手で、ということにこだわりたいのです。

当然彫刻も人(私)が彫刻する

「人の手での彫刻」もこだわりたいポイントです。最近は、彫刻も自動サンドブラスト機という機械での彫刻が増えております。それもやはりできれば、手で彫刻したいという気持ちが強いです。でも、彫刻という作業は本当につらく、厳しい作業です。

真夏では、とてつもない暑さの中、手袋、マスク、イヤーバフなどをしなくてはいけません。
ほんとにサウナに入っていると言っても過言ではないですね。

夏は灼熱地獄、冬は手袋をしていても、指先が凍傷になりそうなほどの寒さです。圧縮空気を使用しているので、温度が低い時は、ノズルの先が凍結することもあります。

まとめ

とても硬い石という素材に文字を彫る。

これは、とても大変なことです。以前も書いたことありますが、古代エジプト時代に彫刻したヒエログリフが現代でも明瞭に見えるということはほんとに凄いことです。

石に文字を刻むという行為が、「ただの石」を「お墓」つまり、故人の歴史、思い出、存在を備えた存在に昇華させるための儀式だと考えています。

文字の彫刻は、できうる限り大事にしたいと考えます。