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    「お墓の花がすぐ枯れる本当の理由——花立ての構造と水腐れの話」

    こんにちは。兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー、おおきた石材店の大北和彦です。

    「お墓に花を供えると、すぐに枯れてしまう」

    夏になると、こういうご相談が増えます。

    暑さのせいだと思っている方が多いのですが、実はもうひとつ、大きな原因があります。

    花立ての水が腐っているのです。

    これはお花の問題でも、気候の問題だけでもありません。花立て——お墓にお花を供える石の穴——の構造と、メンテナンスの問題です。今日は、石材店の施工の観点からこの問題を整理します。

    目次

    なぜ花立ての水は腐るのか

    花立ての穴に溜まった水は、放置すると必ず腐ります。これは避けられません。

    水が腐る原因は、バクテリアの繁殖です。花の茎から出る有機物(糖分・ミネラル)が水に溶け込み、バクテリアの栄養源になります。気温が高いほど繁殖が速く、夏場は数日で水が濁り、腐敗臭が出ることもあります。

    問題は、花立ての構造によってこの腐敗の速さが大きく変わる、ということです。

    花立ての構造——石材店から見た「問題のある穴」

    花立ての穴には、大きく分けて2つのタイプがあります。石に直接穴を開けたものと、石の穴にステンレスや真鍮の筒を入れたものです。

    穴が浅い花立て

    古いお墓に多いのが、穴が浅いタイプです。石に開けられた穴の深さが5〜8cm程度しかないと、花の茎が底まで届いてしまい、茎が穴の底に当たった状態で立ちます。

    この状態で何が起きるか。茎の断面が穴の底の石に押しつけられ、水を吸い上げる通路(道管)が塞がれます。花は水の中にあるのに、うまく水を吸えない状態になるのです。結果として、花は早く萎れます。

    また、穴が浅いと水の量が少なく、少量の水はすぐに温まり、腐敗が速まります。

    穴が石むき出しの花立て

    ステンレスや真鍮の筒が入っておらず、石に直接開けた穴をそのまま使っているタイプです。

    石の穴は内側がザラザラしています。このザラザラした石の表面に、花の茎から出た有機物や藻が付着・堆積していきます。石の穴は取り外せないため、内部を洗うことが非常に困難です。

    重い石ごとひっくり返して内部をこすらない限り、汚れは蓄積する一方です。この堆積した有機物が水の腐敗をさらに加速させます。

    穴の直径が細すぎる花立て

    穴の直径が細いと、水量が確保できないことに加えて、空気の流れが悪くなります。密閉に近い状態になると、嫌気性のバクテリア(酸素を嫌うバクテリア)が繁殖しやすくなり、腐敗がより急激に進みます。あの独特の「ドブ臭」の原因がこれです。

    夏に花が特にすぐ枯れる理由

    夏場に花が特に早く枯れるのは、気温の問題だけではありません。

    石は蓄熱します。直射日光が当たる墓石の表面温度は、真夏の晴天日には60℃を超えることもあります。花立ての石も同様に熱せられ、穴の中の水温が大幅に上がります。水温が高いほどバクテリアの繁殖は速く、同時に水中の溶存酸素が減り、花の根や茎が酸素不足になります。

    また、高温の水は蒸発も速いため、水量が急激に減ります。水がなくなれば、当然花は枯れます。

    但馬・豊岡の夏は、山に囲まれた盆地のような地形の墓地が多く、日中の気温が高くなりやすい場所があります。そういった立地のお墓では、花が2〜3日で枯れてしまうことも珍しくありません。

    藻の発生——もうひとつの問題

    水腐れとは別に、花立ての穴に藻が発生することがあります。

    藻は光と水があれば増殖します。穴の内壁が緑色になり、ぬるぬるした状態になります。この状態の花立てに花を差し込むと、茎が藻の膜に覆われて水を吸い上げにくくなります。また、藻自体も腐敗の原因になります。

    石の穴に直接藻が付くと、取り除くのが大変です。穴の中に歯ブラシを差し込んでこすっても、奥まで届かないことが多く、完全には除去できません。

    対処法——今すぐできること

    ① 水を入れすぎない・こまめに替える

    花立ての水は、花の茎が底から2〜3cm浮いた状態になる量が理想です。茎の断面が底に当たらないよう、適切な水量を保ちましょう。夏場は少なくとも1週間に1度は水を全部抜いて入れ替えることをお勧めします。

    ただ、正直に言えば「週1回お墓に来て水を替える」のは、多くの方にとってハードルが高すぎます。遠方にお住まいの方や、高齢でお参りの頻度が少ない方には、現実的ではありません。水を替えることが難しい場合の考え方は、この記事の最後でお伝えします。

    ② 花を差し込む前に茎を切り直す

    花の茎は、切り口が空気にさらされると水を吸い上げにくくなります。お墓に来たら、まず花の茎を水中で斜めにカットしてから差し込む——「水切り」と呼ばれるこの方法で、花が水を吸い上げやすくなり、長持ちします。

    ③ ステンレス花立て筒を取り出して洗う

    ステンレスの花立て筒が入っているタイプは、筒を引き抜いて丸洗いできます。藻や有機物が付着していたら、歯ブラシと中性洗剤でこすり洗いし、よくすすいでから戻してください。これだけで花持ちが大きく変わります。

    根本解決——ステンレス筒への交換

    「穴が浅い」「石むき出しで洗えない」「直径が細すぎる」——こういった花立ての構造的な問題は、日常のメンテナンスでは解決できません。

    この場合、ステンレス製の花立て筒への交換を検討してください。

    石の穴に収まるタイプ

    穴の直径・深さに余裕がある場合は、穴の中に収まるステンレス筒を取り付けます。筒を引き抜いて丸洗いできるため、藻や有機物の清掃が格段に楽になります。プラスチック製の筒はボロボロに劣化しやすいため、ステンレス製への交換をお勧めします。

    石の上に乗せるタイプ

    穴が小さくてステンレス筒が中に入らない場合は、石の穴の上に乗せる形状の花筒があります。穴の直径に合わせた小さめのサイズも用意されています。

    ただし、正直に言うと、このタイプには注意が必要です。筒が細く短いと、水量が少なく水温が上がりやすいため、上で説明した「水腐れ・花の早枯れ」の問題が解消しきれないことがあります。応急的な対処にはなりますが、理想的な解決策とは言いにくい面もあります。

    なお、花立ての石を丸ごと別の石に交換する方法は、石の種類や色が変わって「いかにも交換した」という見た目になってしまう上、費用もかなり高くなります。現実的な選択肢としては、まずステンレス筒の交換・追加を検討するのがよいと思います。

    「うちの花立ては穴が小さい、どうすればいいか」——判断に迷う場合は、写真を送っていただければ状況を確認した上でお答えします。

    まとめ

    • 花立ての水は必ず腐る。夏は気温と石の蓄熱で腐敗が加速する
    • 穴が浅い・石むき出し・直径が細い——構造的な問題が花の早枯れを引き起こす
    • 茎の断面が底に当たると水を吸い上げられない。穴の深さは重要
    • 藻の発生も花の水揚げを妨げる。ステンレス筒は取り外して丸洗いできるのが利点
    • 日常の対処法:水は適量・花の茎を水切りしてから差す。夏の週1水替えは理想だが難しい場合は造花との併用も一つの方法
    • 根本解決はステンレス筒への交換。石の穴に収まるタイプが理想。穴が小さい場合は上乗せタイプもあるが、細く短い筒は花の早枯れ問題を解消しきれないことがある
    • 花立て石の丸ごと交換は見た目・費用の面から現実的でないことが多い。まずステンレス筒の対応を検討を
    大北和彦

    お墓ディレクターの視点

    「水をこまめに替える」が難しい方に、ひとつご提案があります。生花が萎れた後、次のお参りまでの間を「造花(アーティフィシャルフラワー)」でつなぐという方法です。枯れてぐったりした花がお墓にお供えされたままになっているのは、どうしても気になるものです。おおきた石材店では、一品物のアーティフィシャルフラワーも扱っており、生花と造花の入れ替えサービスも有償で行っています。「頻繁には来られないけれど、いつもきれいにしておきたい」という方は、詳しくは下のページをご覧ください。

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    この記事を書いた人

    兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー。兵庫県北部での唯一の「お墓ディレクター1級」取得。供養のプロ、墓地管理士。「お墓」に関する記事を1500以上執筆中。現在お墓に関する記事を365日毎日更新継続中。(一日怪しい日があるが。。。)地震に強いお墓と雨漏りしないお墓を建てています。

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