【決定版】樹脂舗装(ファイバーレジン)のメリット、デメリット
本日は「樹脂舗装」のメリット、デメリットを詳しくお伝えします。かなり突っ込んだ内容となっています。基本、私はお墓に「樹脂舗装」をお勧めしません。何度も言っておりますが、重ねてそのあたりを詳しく説明します。
◇兵庫県豊岡市のお墓のアドバイザー大北和彦です
兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー、おおきた石材店です。
☑ 兵庫県北部で唯一の「お墓ディレクター1級」
☑ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
☑ (一社)日本石材産業協会常任理事
☑ 顧客満足推進委員会委員長
おおきた石材店はお墓のことを全く知らない人にも、お墓を建てる時に大事なことをわかりやすくお伝えすることを第一に考えて情報発信しています。
樹脂舗装とは?
樹脂舗装とは、樹脂のバインダー(半液体状の固まる前の状態のもの)というものに、砕石とか細かい石を混ぜて、固める舗装工法です。お墓に使われることが最近増えてきていますが、いろいろな問題があります。それではまずはメリット(良い点)から。
樹脂舗装の良い点
仕上がりが美しい
樹脂舗装、私はファイバーレジンというメーカーのものを利用していますが、この製品の良い点をお伝えすると。。。
(※ 現在は使用できない砕石、販売中止になった石もあります。ご了承ください)
非常に多くの色があり、鮮やかな色をしていて、魅力的です。自分の好みに合わせて施工することができます。また、樹脂舗装の特徴として、濡れ色に近い鮮やかな仕上がりになってその石の独特の色目を強調するので、余計魅力的でもあるのです。
私が一番よく施工したことがあるのは、この大磯という石の「1分」という一番小さなサイズ。(※ 1分というのは約3ミリ程度のサイズのこと)あるいは「2分」という少し大きめのサイズ(写真は2分です)。
グレー色に近いもの。これも美しいですが、ギリギリ和型のお墓に合わせられる色です。あまり派手な色になると和型のお墓本体よりも目立ってしまうので注意が必要です。
ピンク系のもの。このピンクになると、和型には合わせにくいです。よほどピンクが好きな方は検討してもいいですが、和型とは合わないのではないかと思います。
デザイン墓には合う場合があります。デザイン墓の場合は検討してみるのもいいと思います。
赤色はサンプルとして、工場前に施工しました。
現在、10年以上は経過して、ずいぶん落ち着いた色になっていますが、赤色の砕石です。
逆に言えば、完成時がもっとも美しく、その後、経年劣化してだんだん鮮やかさが落ちます。
がしかし、それが逆に曲者でもあるのです。新規のお墓に施工する場合でも、あまり鮮やかな砕石を利用すると、そっちが目立って、逆にお墓が目立たない、という逆転現象も起きます。ましてやある程度経過したお墓のリフォームの場合、地味な色の採石を強くお勧めします。那智石、大磯、浜那智といったグレー系の石を使ってください。特に「赤色」「ピンク色」というのはお墓にはよほど特別な場合を除き、お勧めできません。その砕石ばかり目立ってしまって、お墓が完全な脇役となってしまいます。
樹脂舗装の悪い点
実はいくつもあるんです。わかる範囲でお伝えしますと。。。
① 経年劣化によって退色する
完成時は素晴らしく美しい、というのはお伝えしましたが、施工完了時がもっとも美しく、時間とともに光沢がなくなっていきます。この光沢が無くなるタイミングにばらつきがあるのです。製品によっても、施工方法によってもそのタイミングが異なります。
製品による差ですが、他社の製品は存じ上げませんが、私が利用させていただいている「ファイバーレジン」という製品ですが、「ファイバー=繊維」 「レジン=樹脂」という二つの言葉をくっつけてあるのですが、通常レジン(樹脂)という言葉はよく商品名にも使われています。でも、ファイバー(繊維)という言葉は他社の製品には使われていません。樹脂が繊維状に固まり、樹脂が液だれと言って、砕石の下にどんどん沈み込んで、表面の樹脂層が薄くなる(→光沢が抜けるのが早くなる)のを防いでいるようです。また、繊維層があるので、樹脂自体が劣化しずらいという特性もあるそうです。
また、製品によると、樹脂が黄色く変色するものがあるようですが、ファイバーレジンは今まで黄色くなったことがありません。施工不良で泡立ったようにはなりますが、それも施工が熟練してくると防ぐことができます。
他の施工されたものは、早いもので1年前後で光沢が無くなり(つまり表面の樹脂がなくなってしまった)状態になるものもあります。通常、3年から5年程度で表面の樹脂が落ちてしまい、光沢が失われ、通常の砕石になります。その後、更に経年経過すると、樹脂が全くなくなり、剥離、というか砕石がボロボロ外れてきます。こうなると、再施工が必要となります。
おおきた石材店が使っているファイバーレジンは工場前に施工しているんですが、5年くらいすると、徐々に光沢が落ちて来出します。赤い砕石を施工したのはもう10年以上昔になりますが、光沢はさすがに落ちましたが、まだまだしっかりしています。
上の写真は2021年6月1日に撮影したものです。工場前に設置したものですが、直射日光がバリバリにあたり、冬は雪の下に埋まるという厳しい環境下にある場所に施工しました。上の赤色は施工後10年以上経過しています。ずいぶん退色していますが、表面はまだしっかりしております。下の白っぽい砕石と右下の濃いグレー系のやつは5年以上経過したものです。どちらも光沢は徐々に落ちつつありますが、まだ残っています。
でいずれも、光沢は落ちて来つつありますが、表面の砕石が剥がれる状態ではありません。私が思うに、このファイバーレジンは耐久性は非常に優れているので、この程度で済んでいますが、他のメーカー製の樹脂ならもっと早く劣化しているのでは? と思います。
② 草が生える
防草、つまり草が生えないように施工するんですが、実は草が生えます。
周囲の延石と樹脂材の隙間に背が高い草が生えてきています。
このように。。。
コケも生えてきます。こうなると駆除というか、きれいに掃除がとても難しい。樹脂砕石の隙間から生えてくる草ですが、砕石と砕石の隙間の空間に根を張るので、極めて抜きにくいです。しかも、割と良く生えてきます。生えだすと。。。
通常の砕石なら、草を燃やすバーナーで処理できますが、この樹脂舗装は熱に弱いので、決してしてはいけません。この草を除去するのは、「手で」しかありません。しかも根っこを取り去るのが極めて難しいという厄介な状態です。根が残ると毎年、場合によっては年に何度か生えてくるのは皆さんもご存知ですよね。
③ 凍結に弱い
実は凍結に弱いといううわさを聞きました。
おおきた石材店では、下地は必ずコンクリート、あるいはそれに類似するものを施工します。しかし、聞くところによると、施工費用が安くなるため、下地をC30とかの砕石を使い、それを転圧して、下地にする場合もあるそうです。施工マニュアルにも下地は砕石で仕上げてもいい、と記されています。ですが、寒冷地、特に朝晩冷え込む地域では、その下地が凍結によって浮き上がり、そのままファイバーレジンも浮き上がってしまう、という噂(うわさ)を聞いています。ファイバーレジンですら、そうなのですから、その他の製品は押して知るべし、です。
比較的暖かい時間に施工してしまっても、朝晩冷え込み、凍結してしまった場合、砕石内の水分が凍結、膨張し、上に上がり、わずかにファイバーレジンも浮き上がった状態になるそうです。浮き上がりに注意しなくてはいけません。
④ 価格が高い
先ほど、下地にコンクリートを使用する、と言いました。一番安定していて、下地として、美しく残っているから、というのが目的ですが、砕石を敷くよりも高額となります。しかもある程度強度が出るまで放置しなくてはいけないので、長い養生期間が必要です。当然施工時には下地のコンクリートは完全乾燥が条件ですから、晴れ間の多い時期ならいいですが、冬とか梅雨とかの雨の多い時期は養生も必要ですし、濡れた状態なら、乾燥させないといけないので、余計な手間が必要です。しかも施工後、24時間はこれまた濡れないように養生が必要です。
施工時には最低気温の条件もありますし、とにかく施工管理が極めて難しい製品です。それだけにその手間と時間は価格に反映します。安い値段ではできないのです。昔、まだ慣れない頃、冬季に施工して、施工直後、不具合が出て、やり直しということもしたことがあります。ほんとに季節と時間と温度、これに非常に気を使います。その分値段に転嫁せざるを得ないです。
⑤ 施工が難しい
④の項目にも書きましたが、施工管理というか、施工条件がいくつもあり難しい上に、施工自体も難しいのです。樹脂が不要な部分にくっつくと取れません。素手で施工していると手が真っ黒になって、数日、場合によっては1週間きれいになりません。服とかにつくとまず除去不可能。道具に付いた樹脂など、固まる前にきれいにしておかないと、普通では落ちません。
ですから、セメント用道具と樹脂舗装用道具を分けて利用しないといけないです。施工時は養生テープを施工する回りに必ず張ります。さらに気温が夏季だと固まる時間が短く、道具に付着した樹脂も早いタイミングで固まりだします。セメント等のようにのんびり施工できません。
逆に冬季などの気温が低いときは、固まるのが遅く、施工後、雨対策のため養生シート等をした後も、まだ何かに接触したりしたら、付着したりするので、極めて気を使って養生しないといけません。
そういったたくさんの条件が価格に転嫁してしまうのです。
⑥ 耐久性が低い(= 再施工のタイミングが早い)
樹脂の光沢が無くなると書きました。その流れを書いてみますと。。。
ア) 施工時は砕石全体が樹脂に覆われていて美しい(濡れた色になっている)
↓
イ) 天候等により、見える部分の樹脂がなくなり、濡れ色が失われる。光沢がなくなり、元々の乾燥時の色に。見えない裏側の樹脂は残っているので、固定した状態は保たれる。
↓
ウ) 更に樹脂が失われ、表面の砕石を維持するだけの樹脂がなくなり、表面の一部から砕石が抜け落ちる。まだらに抜け落ちるので、見た目が悪く、不具合になる。
ウ)になるまでに何らかの手を打たないと、ダメなのですが、そのタイミングが結構バラバラです。ファイバーレジン以外の樹脂なら早いもので1年~というタイミングでイ)がやってくる場合もあるようです。本来なら、3年~という感じでしょうか? これ実は、樹脂と砕石の量は本来決まっているはずで、それを守っているなら、ある程度イ)のタイミングは早くは来ないはずですが、量の調節をしても、完成時はわからないのです。でも多分、樹脂の量に比べて砕石の量を増やしてしまうと、このイ)になるタイミングは早くなるはずです。表面を覆う樹脂の膜が薄いはずですから。
ファイバーレジンに関しては樹脂と砕石はセットで販売ですから、その調節は難しいはずです。一見、砕石の量を増やせば、施工面積も増えるので割安になりそうですが、耐久性が落ちるなら、これは全く本末転倒で、絶対に避けるべきです。ですが、安くで請け負う業者さんはそうせざるを得ないのかもしれません。
以上が樹脂施工のメリット、デメリットです。
まとめ
樹脂舗装のメリット、デメリットですが、メリットが極めて少ないですね。完成時の美しさのみ、ですから。
逆にデメリットは私が考えるだけで6つくらいあります。これほどデメリットが多い施工方法ですから、お勧めしないというのは本音です。
それでもしてほしいというモノ好きな人がごく稀にいらっしゃいます。そういう場合は可能な限りの手間をかけて施工させていただきたいので、おおきた石材店では本当に高い値段設定をしています。でも正直に言わせてもらうと、やめましょう、が本音なんです。
見た目が美しい、しかも完成直後は濡れ色ですから、素晴らしい見た目です。近所のお墓でそれが施工されていると、
「まあ、きれい。素敵なお墓ね。いくらくらいするの?」
と聞いて、思ったより安いとなると、きっとうちもしてほしいとなると思います。
出来立ては美しい。でもその美しさは長持ちしない。早いタイミングでリフォームの必要がある。石材店にとってはメリットが多いです。次が早く来ますから。
でも、ほんとにやめましょう。
そんなに見た目、必要ですか?
大事なのは草が生えにくい、生えても抜きやすい。
できるだけお手入れが簡単に済む、ではないですか?
その条件にこの樹脂舗装、合ってますか?
かといって一番ベストな「防草施工」ってなんなの?
と言われると、なかなかはっきりとはお答えできないのが、残念なのですが、これからも一番ベストな「防草」を探してみます。
現在のところの「お墓の防草工事」のおおきた石材店での解答はこちらになります。
「お墓の防草工事 おおきた石材店が勧める手法」