「説明する」には価値がある
私も、かつては「説明しない石材店」でした。いや、正確に言うと「説明の必要性に気づいていなかった」んです。

◇兵庫県豊岡市のお墓のアドバイザー大北和彦です
兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー、おおきた石材店です。
☑ 兵庫県北部で唯一の「お墓ディレクター1級」
☑ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
☑ (一社)日本石材産業協会正会員
☑ お墓の法律のプロ、「墓地管理士」取得
おおきた石材店はお墓のことを全く知らない人にも、お墓を建てる時に大事なことをわかりやすくお伝えすることを第一に考えて情報発信しています。
お客様に石の種類を聞かれたら「これがいいですよ」
工法について聞かれたら「うちはこのやり方です」
価格の内訳を聞かれたら「一式でこの金額です」
これが「普通」だと思っていました。 同業者のみなさんもそうしていたし、それで商売は成り立っていた。でも、お墓ディレクター1級の勉強を始めて、 石産協の活動に関わってみて、全国の事例を知って、お客様の声を聞いて、 私は気づいたんです。「これ、まずいんじゃないか?」と。

「説明する」の誤解
国民生活センターに寄せられる 「お墓に関する相談」のデータを見たとき、 正直、ショックでした。年間1000件近い相談。その多くが「説明不足」「認識の違い」から生まれている。
「石材店が説明してくれなかった」 「契約内容と違う」 「もっと早く知りたかった」
これ、全部「情報の非対称性」から生まれた問題です。
お客様は知識がない。でも、私たちは知識がある。この差が、トラブルを生んでいる。そして、怖いのは、 多くの石材店が「悪気なく」これをやっているということ。「説明しない」ことが悪い、と言っているわけではありません。むしろ、それが「正解」だった時代もあったんです。
地域に石材店が1~2軒しかなかったり、 お客様は「石材店におまかせ」が当たり前だったり、「説明する」よりも「確実な仕事」が評価されていたり。。。信頼関係は、言葉ではなく「実績」で築かれていた時代です。
この時代、「職人は口下手でいい」というのは、 ある意味、正しかったんです。若い世代の中にも、こう考える人がいます。
「情報を出すと、お客様が他の店と比較してしまう」
「専門知識を教えると、値切られる」
「説明に時間をかけると、効率が悪い」
わかります。私もそう思っていた時期がありました。
でも、5年間で1,500記事書いて、あらゆる情報をブログで公開して、 わかったことがあります。情報を出せば出すほど、お客様は「この店に頼みたい」と思ってくれる。
なぜか?
説明してくれる石材店があまりにも少ないから。
「説明する」の価値がわかっていない

私たちは「技術」は教わります。石の加工、施工、デザイン。 でも「説明の仕方」は教わらない。「どこまで説明すればいいのか」 「専門用語をどう言い換えるか」 「お客様の不安に、どう応えるか」これ、実は「技術」と同じくらい重要なスキルなんです。
でも、業界ではあまり教育されていない。
だから、多くの石材店が 「説明したいけど、どう説明すればいいかわからない」 という状態にあると思うんです。今、お客様が本当に求めているのは、「安心」です。
・この石材店は信頼できるのか
・この金額は妥当なのか
・この工法で大丈夫なのか
・将来、後悔しないか
これらの不安を消すのが、「説明」なんです。
説明されないまま契約すると、お客様は常に不安を抱えたまま。でも、丁寧に説明されると、「この人に任せて大丈夫」と思ってくれる。
実際、おおきた石材店では、説明に時間をかけたお客様ほど、満足度が高く、紹介もしていただける場合があります。「説明する」ことは、実は、私たち石材店にとっても武器になります。
「説明する」が武器になる
1.差別化になる
他の店が説明しないなら、説明する店が選ばれる。なぜなら、その価格になるのは何故? を知りたいから。
2.値引き圧力が減る
「なぜこの価格なのか」を理解してもらえれば、単純な価格比較にならない。むしろその価格になって当然、ということが理解される。
3.クレームが減る
認識の違いから生まれるトラブルがなくなる。多くの誤解、トラブルは説明不足。これは間違いないです。
4.リピート・紹介が増える
満足したお客様は、必ず誰かに話してくれる。お墓は一生に一度建てるかどうかのことなので、そのままリピートになることは少ないですが、明らかに評価が上がることは間違いないですね。
5.自分の専門性が上がる
説明するために勉強するから、知識が深まる。知識が深まるから、より具体的、専門的なことを説明できる。この繰り返しが高い信用と信頼につながると思います。
つまり、「説明する」ことは、短期的には手間でも、長期的には投資なんです。
もし、全国の石材店が「説明する」ことを当たり前にしたら、業界全体の信頼度が上がります。国民生活センターへの相談件数も減る。「石材店は信頼できない」というイメージも変わる。
そして、私たちの次の世代が、もっと仕事しやすくなる。
これ、一軒の石材店だけでは変えられません。でも、若い世代から少しずつ変えていけば、10年後、20年後の業界は変わる。私は、そう信じています。
「じゃあ、具体的にどうすればいいの?」
私が実践していることを、いくつかシェアします。完璧じゃないし、試行錯誤の連続ですが。
【レベル1:見積もりを透明にする】
一式○○万円ではなく、石材費、加工費、施工費、その他と可能な限り分けて書く。これだけでも、お客様の安心感が違います。
【レベル2:選択肢を示す】
「うちはこれです」ではなく、「A案、B案、C案があります。それぞれのメリット・デメリットは…」と説明する。そして、最終的にはお客様に選んでいただく。
【レベル3:「なぜ」を説明する】
「この工法がいいです」だけでなく、「なぜなら、この地域の地盤は軟弱で、不同沈下(傾いてしまう)のリスクがあるから」と理由を説明する。
【レベル4:デメリットも伝える】
「この石は美しいですが、吸水率が高いので、建墓後、時間とともに変色のリスクがあります」。正直に伝えることで、信頼が生まれます。
【レベル5:情報発信】
ブログ、SNS、チラシ、何でもいい。自分の考えや知識を発信する。これが一番ハードル高いですが、効果も一番大きいです。
正直、説明には時間がかかります。私も最初は、「こんなに説明してたら、効率悪いんじゃないか」と思いました。でも、結果的には、逆でした。説明に時間をかけたお客様は、
・決断が早い(納得しているから)
・後からの変更が少ない
・クレームがほぼゼロ
・紹介してくれる
つまり、トータルで見ると、むしろ効率がいいんです。それに、説明しながら、お客様の本当の希望が見えてくる。これ、実は一番大事なことかもしれません。
「しっかり説明する石材店」がいいですか? それとも「見積書の提出のみ」の石材店でいいですか?