雪がゆるみ始める頃、「お墓が少し傾いた気がする」「花立てがガタつく」「目地にすき間が出た」——そんな相談が増えます。
地震の影響を疑われる方も多いのですが、但馬のように冬の冷え込みがある地域では、凍上(とうじょう)が原因になっているケースも少なくありません。
今日は、凍上とは何か、どんな症状が出るのか、放置するとどうなるのか、そして対応策の考え方を、できるだけ分かりやすくまとめます。

◇ お墓ディレクター1級:お墓のプロの証、1級取得者は全国で2桁
◇ 墓地管理士:お墓、納骨堂、永代供養墓の法律の専門家
◇(一社)日本石材産業協会正会員、兵庫県支部理事
◇ 石材加工技能士1級:石の加工の技能を表する国家資格
◇ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
◇ 「地震に強いお墓」施工店
おおきた石材店
昭和の初めより三代続く、兵庫県豊岡市の小さな石材店。震度7の地震でも倒れなかった「地震に強いお墓」と特許技術「雨漏りしないお墓、信頼棺」の正規代理店。百年後に残るお墓を作っています。

凍上(とうじょう)とは何か(ざっくり言うと)
凍上は、冬に地面の中の水分が凍る→膨らむ→気温が上がり解ける、という繰り返しで、地面が“持ち上がったり、沈んだり”して隆起(持ち上がる)する現象です。ポイントは、地面が一様に上がるのではなく、
- 日陰と日なた
- 水が溜まりやすい場所と乾きやすい場所
- 土質が違う場所
で、動き方がバラバラになること。その結果、上に載っている外柵や墓石が「傾く」「ズレる」状態になります。
春前〜雪解けに出やすい“症状”3つ
凍上が絡むとき、現場でよく見かけるサインがあります。
1)据え付けの水平が崩れる(ほんの数ミリでも違和感)
- 「前より少し傾いて見える」
- 「水鉢(みずばち)の水が片側に寄る」
- 「香炉の位置がズレたように感じる」
数ミリでも、視線の高さや背景によって“気づきやすい時期”がこの季節です。
2)目地(継ぎ目)が切れる/すき間が出る
- 目地に細い線のようなすき間
- 角の部分だけ開く
- 以前はなかった段差が出る
「割れた」ほどではなくても、継ぎ目が動いた跡は早めに把握しておいた方が安全です。
3)花立て・香炉・塔婆立てがガタつく
これは地味ですが重要です。
凍上で土台が微妙に動くと、部材が「ピタッ」と収まらず、触った瞬間にガクッと動くことがあります。
雪解け直後に多い事故は、直そうとして押す/持ち上げる/手を入れる、で起きがちです。
「気になる=触る」ではなく、「気になる=記録する」が安全です。
“放置コスト”が増える理由(直しが大きくなる)
凍上由来のズレは、放置すると大きくなりやすい傾向があります。理由はシンプルで、
- 一度ズレたところに、次の冬の凍上が追い打ちをかける
- すき間ができる → 水が入りやすくなる → 凍結・融解で動きやすくなる
- “小さな傾き”が“部材同士の噛み合わせ”を悪くして、ガタつきが増える
つまり、最初は「数ミリの違和感」だったものが、翌シーズンに「目に見えるズレ」「手で触ると分かるガタつき」になっていくことがある、ということです。
お墓は“動いてもすぐ倒れる”ものではありませんが、直す段階になると、軽微な補修では済まなくなるケースが出てきます。
対応策は1つじゃない:状況で変わる“考え方”
凍上が疑われるからといって、すべてを大工事にする必要はありません。
大切なのは、「どこが動いているか」を見極めることです。
対応策①:据え直し(まずは“水平と収まり”を戻す)
目地が切れている、部材が噛み合っていない、ガタつきが出ている
こうした場合は、据え直しで改善することがあります。
ただし、ここで重要なのが「据え直しだけで止まる動きか?」という視点。
下が動いているなら、次の冬に再発する可能性もあります。
対応策②:基礎の考え方(“動きにくい土台”をつくる)
凍上は“地面の動き”なので、根本は土台側の設計・施工の話になります。
地震対策でも同じですが、上の石だけを強くしても、下が動けばズレは起きます。
ここは専門領域なので、一般論としては、
- 水が溜まらない(排水の設計)
- 影響を受けにくい層まで安定させる
- 荷重を分散させて部分的な沈下・浮きを抑える
といった“土台からの対策”が効いてきます。
対応策③:経過観察(ただし“記録”は必須)
軽微な違和感で、危険がない場合は、すぐに工事せず
「今季は記録して様子を見る」も選択肢です。
その代わり、基準を決めて観察するのがコツです。
- 目地のすき間が広がっていないか
- ガタつきが増えていないか
- 水の溜まり方が変わっていないか
自分でできる「凍上かも?」チェック(30秒)
現地で見て、次のどれかが当てはまれば、凍上の影響を疑ってOKです。
- 日陰側だけ沈んでいる/浮いている
- 目地が“角だけ”開いている
- 花立てがガタつく(以前は気にならなかった)
- 土の部分を踏むとフワッとする
- 水が溜まる場所ができた(ぬかるみが続く)
ただし、地震・地盤沈下・施工由来など他の要因もあり得るので、「断定」はしません。まずは状況把握が大事です。
写真3枚で判断が早くなる
「これ、凍上?それとも別の原因?」は、写真でかなり整理できます。
その場で直そうとせず、次の3枚を撮るのがおすすめです。
- 全景:お墓全体(正面+少し斜め)
- 足元:地面の沈み、段差、日陰側が分かる位置
- アップ:目地のすき間、ガタつく部材の接点
まとめ:凍上は“基礎から考える”と納得できる
春前に増える「石の浮き・傾き」は、地震だけでなく凍上が関係することがあります。
そして凍上対策は、地震対策と同じく 上ではなく、下(基礎・地面)から考えるのが基本です。
気になる違和感があったら、まずは安全第一で「触らずに記録」。
写真3枚だけでも、急ぎかどうか、様子見で良いか、整理しやすくなります。

















