お墓参りのとき、せっかくだからきれいにしてあげたい——その気持ちは当然のことです。でも、善意でやっている掃除が、石を傷める原因になっているケースが少なくありません。
掃除の方法に「これが正解」という一律の答えはありません。どういう状態のお墓か、どういう種類の石かを見極めることが基本です。今回は、特に注意してほしいNG行動と、その考え方を整理します。

◇ お墓ディレクター1級:お墓のプロの証、1級取得者は全国で2桁
◇ 墓地管理士:お墓、納骨堂、永代供養墓の法律の専門家
◇(一社)日本石材産業協会正会員、兵庫県支部理事
◇ 石材加工技能士1級:石の加工の技能を表する国家資格
◇ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
◇ 「地震に強いお墓」施工店
おおきた石材店
昭和の初めより三代続く、兵庫県豊岡市の小さな石材店。震度7の地震でも倒れなかった「地震に強いお墓」と特許技術「雨漏りしないお墓、信頼棺」の正規代理店。百年後に残るお墓を作っています。

金属製のブラシ・たわし——石の表面を削ってしまう
苔や汚れをこすり落とそうとするとき、問題になるのはブラシやたわしそのものではなく、素材が金属かどうかです。ステンレス・鉄・真鍮などの金属製のブラシやたわしは、墓石には使ってはいけません。金属が石の表面を直接削り、研磨面に傷をつけてしまいます。傷がつくと光沢が失われ、水あかや苔が付着しやすい表面になります。
一方、金属製のブラシやたわしが全面的にNGというわけでもありません。使える場面・石の種類・状態によっては有効なケースもあります。ただし、その判断を誤ると石に取り返しのつかないダメージを与えることになります。金属製のブラシ・たわしの使用は、素人判断では避けてください。

お墓ディレクターの視点
掃除の方法に「これが正解」という一律の答えはありません。どういう状態のお墓か、どういう種類の石かを見極めることが先です。光沢のある石に金属製ブラシはNG。でも光沢がすでにないお墓に、やわらかいスポンジだけでは太刀打ちできないこともある。状態を見ずに「この方法が正しい」と決めてかかると、かえって傷める結果になります。
漂白剤・洗剤——素人判断での使用は避ける
洗剤については、「一切使ってはいけない」ということではありません。基本は中性洗剤で汚れを落とし、それでも落ちない場合により強力な洗剤を使う、という段階があります。ただし、使用できる洗剤の種類・濃度・作用時間は、石の種類・性質・加工方法によって大きく異なります。
石によっては、強い洗剤が表面を変色・劣化させることがあります。また同じ洗剤でも、放置時間が長すぎると石へのダメージが出るケースもあります。「この石にこの洗剤をこの時間」という判断は、石の知識がなければ難しい。そのため、素人が一人で判断して使用することはお勧めできません。プロの指導の下で使用することで、初めて安全かつ効果的に活用できるものです。

お墓ディレクターの視点
プロのクリーニング作業では、石の種類と状態を確認した上で洗剤を選び、時間を管理しながら使います。同じ作業を知識なしに行うと、取り返しのつかない変色や劣化を招くことがあります。「強い洗剤を使えばよく落ちる」は正しいですが、「何の石に、どの洗剤を、どれくらいの時間使うか」がセットになって初めて成立します。迷ったときはご相談ください。
高圧洗浄——使ってよいが、注意点を知った上で
高圧洗浄機は、広い面積の汚れを短時間で落とせる有効なツールです。使用できる環境であれば、積極的に活用して構いません。
ただし、把握しておくべき注意点が二つあります。ひとつは彫刻文字の欠損です。強い水圧が文字の凹部に直接当たると、文字の輪郭が崩れることがあります。文字部分への直接噴射は避けるか、距離をとって使用してください。もうひとつは劣化したシールの剥離です。石と石の接合部のシール(コーキング)がすでに劣化している場合、高圧の水流で剥がれることがあります。シール部分の状態を事前に確認しておくことをお勧めします。
これらのリスクを理解した上で、自己責任にて使用してください。
酸性・アルカリ性の液体——素人判断での使用は避ける
酢・クエン酸などの酸性の液体、重曹などのアルカリ性の液体は、「自然由来だから安全」と思われがちですが、石材には必ずしもそうではありません。強い酸性・アルカリ性の液体は、石の表面を化学的に溶解させることがあります。
プロのクリーニングでは、石の種類・状態に応じて酸性・アルカリ性の洗剤を使い分けることがあります。ただしそれは、石の性質を把握した上で、濃度・時間・使い方を管理しながら行うものです。知識なしに家庭で試すことはお勧めしません。
では、何を使えばいいのか——まず「状態を見極める」こと
掃除道具より先に、「このお墓はどういう状態か」を見ることが大切です。
光沢が残っている石の場合は、水と非金属製のやわらかいスポンジ・布が基本です。水をたっぷりかけながら、やさしくなでるように拭く。日常的な水あかや埃はこれで十分対応できます。彫刻文字の凹部には、やわらかい歯ブラシが有効です。
光沢がすでに失われている古いお墓の場合は、やわらかいスポンジだけでは歯が立たないことが多い。状態によってはより強い道具や洗剤が必要になります。ただしその判断は石の種類・状態の知識が必要で、素人が単独で判断することは難しい。わからない場合はプロに相談することをお勧めします。
いずれの場合も、金属製のブラシ・たわし、強い漂白剤・強酸性強アルカリ性の液体は避けてください。「状態を見てから、道具を選ぶ」——この順番が正しい掃除の考え方です。

お墓ディレクターの視点
頑固な汚れや経年変化による変色は、日常の掃除では限界があります。「やってみたが落ちない」「どう対処すればいいかわからない」という場合は、無理をせずにご相談ください。状態を見た上で、適切な方法をお伝えします。
※ご依頼を前提としない、どんなご質問でもお気軽にどうぞ

















