接着剤だけで地震対策が完成するわけではありません。

おおきた石材店 代表 大北和彦
〇 お墓ディレクター1級
〇 墓地管理士
〇 石材施工技能士1級
〇 技能顕功賞
〇 一般社団法人日本石材産業協会正会員
おおきた石材店
昭和の初めより三代続く、兵庫県豊岡市の小さな石材店。震度7の地震でも倒れなかった「地震に強いお墓」と特許技術「雨漏りしないお墓、信頼棺」の正規代理店。百年後に残るお墓を作っています。

昨日は「地震対策は接着剤が主役」という話をしました。

でも、接着剤だけで完成するほど、地震対策は簡単ではありません。
地震の現場では
この写真は、福島県相馬市に地震の影響を視察した際の画像です。

お墓が倒れているわけではないのに、回転して、ずれています。

石と石はしっかりと接着されているのに、その下の基礎コンクリートと石が分離して、動いてしまっています。
この写真も同じ場所で。

副碑にもたれかかっている黒いお墓の石。外れそうになっていますが、何とか外れないでいます。これは耐震棒(ボルト)が効いて外れていないようですが、一番下の白い石が基礎と分離してしまい、

下にある、納骨スペース(カロートと呼びます)の穴にはまり込んで、傾いてしまっています。基礎コンクリートと白い台の石が分離しなければ、このお墓がほぼ無傷だったはずです。
こちらも同じように倒れてしまっているお墓。

こちらも同様に、カロートに落ち込んでしまっていますが、中のお骨が見えてしまっているのでしょう。ブルーシートで覆われています。

一番下の台石とその下の基礎コンクリートがズレて、その中のカロートに落ち込んでしまっています。このように、簡単にお墓の石はずれてしまい、傾いてしまいます。
墓石が倒れる原因
お墓の一番のウィークポイントはこの部分です。
あまりきれいな図ではありませんが、分かりやすいように手書きで書いてみました。

下が基礎のコンクリート。その真ん中に穴が開いていて(斜線部分)、そこにお骨を納めるカロートがあります。お墓の石はそのカロートを覆うように、その上に建っています。おおよそ、お墓はこのような構造になっています。

強い地震の揺れを受けると、石同士は接着剤、耐震ボルトなどで、しっかり固定されているので、何とか耐久してくれても、一番肝心のコンクリートと台石との間、赤いギザギザ線の部分が弱く、ずれて、

このように、ずれて、傾いたり、落ち込んだり、石全体で倒れたりして、被害が大きくなってしまうのです。
その対処方法は
石とコンクリートは実はあまり相性がよくありません。しっかり固定するのが困難なのです。そのため石同士の固定とは少し違った方法で固定します。
1,固定金具
まずは固定金具。オールステンレス製の強固な固定金具を使用。この金具は強力なのですが、後から見えてしまうとダメなので、見えない部分に設置します。そのためにお墓の構造を変更。

たくさんの固定金具を装着できるようにお墓自体の構造も変更。石同士はもとより、下の基礎コンクリートと石との固定にも多くを使用。

2,樹脂モルタル
次に、石をコンクリートの上に乗せるのに、モルタルを使用しますが、そのモルタルを接着剤を使用した「樹脂モルタル」にすることで、強力な接着力にします。特に、このカチオン系の樹脂接着剤は非常に強固にコンクリートと石を固定してくれます。

樹脂モルタルだけではなく、基礎コンクリートや設置する石の裏側(設置面)にも接着剤を使うことで、非常に強固な一体性を作ることが出来ます。

3,耐震ボルト
最後は耐震ボルト。これも、石のズレ防止に強力なサポートをしてくれますし、上下振動にも、ある程度の対処をしてくれる可能性があります。

このように、一つの石に2か所ずつ設置。このボルトはすべて、ステンレス製のボルトです。
まとめ
このように、お墓の一番のウィークポイントである石とコンクリートの間も3つの手法で、強力に固定しています。
地震対策というのは、どれか一つを選ぶ、ということではなく、出来るだけ多くの対策を細かく積み重ねて、トータルとして対策する、というのが正解ではないかと思います。
本当にちょっとしたことですが、小さなことの積み重ね、小さな改善、が結果として地震からお墓を守ってくれる正解にたどりつける方法ではないのかな、と考えます。













