地震が起きた直後、ニュースでは家屋や道路の被害が大きく取り上げられます。
でも、少し時間が経ってから静かに増えていくのが「墓地の被害」です。
倒れた墓石。ずれた外柵。割れた香炉。
写真で見ると「直せば戻るのでは」と思われがちですが、現場ではそう簡単にいきません。
今回は、福島・相馬の倒壊現場で実際に見たことをもとに、「地震後の墓地で本当に起きること」を、できるだけ静かに、でも現実として書きます。

◇ お墓ディレクター1級:お墓のプロの証、1級取得者は全国で2桁
◇ 墓地管理士:お墓、納骨堂、永代供養墓の法律の専門家
◇(一社)日本石材産業協会正会員、兵庫県支部理事
◇ 石材加工技能士1級:石の加工の技能を表する国家資格
◇ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
◇ 「地震に強いお墓」施工店
おおきた石材店
昭和の初めより三代続く、兵庫県豊岡市の小さな石材店。震度7の地震でも倒れなかった「地震に強いお墓」と特許技術「雨漏りしないお墓、信頼棺」の正規代理店。百年後に残るお墓を作っています。

倒壊後は「元に戻す」ではない。“撤去からのマイナススタート”になる

地震後の墓地で最初に起きるのは、「修理」ではなく 安全確保です。
倒れた墓石は、見た目以上に危険です。
倒れている石はもちろん、「倒れかけ」や「わずかにズレた状態」が一番こわい。触った瞬間に動くことがあります。
そして、現場での復旧は、よくあるイメージのように
倒れたものを起こして、元の位置に戻す
では終わらないことが多いです。
実際は、
- 倒れた部材をいったん退避させる
- 破損・欠け・割れの仕分けをする
- 使える部材/使えない部材を判断する
- 安全に撤去し、足場や周囲区画への配慮をしながら作業する
という “撤去からのスタート” になりやすい。
つまり、ゼロからではなく マイナスから始まる というのが現実です。
修理が新規より高くなる理由:段取り・部材・基礎が“簡単じゃない”

「修理の方が安いはず」と思われます。
もちろん軽微なズレなら安く済むこともありますが、倒壊が絡むと話が変わります。
1)段取りが増える(時間も安全管理も増える)
新規工事は、順番が決まっています。
しかし修理は、現場が“予定通り”にいきません。
- 何がどこまで壊れているか、開けてみないと分からない
- 隣の区画に配慮しながら、手間のかかる撤去になる
- 作業の順序が増える(退避→仕分け→再組立て→固定)
地震後は特に、安全管理の負担が大きくなり、結果としてコストに反映されます。
2)部材が揃わない(同じものが手に入らないことがある)
倒壊で欠けたり割れたりすると、部材交換が必要になります。
ところが、既存の石と「同じ色・同じ質感・同じ加工」で部材を作るのは、簡単ではありません。
- 石の採掘時の違い(色味の違い)
- 加工の再現(角、面、磨きの具合)
- そもそも採れない/閉山、採掘終了している
この「合わせる難しさ」が、修理の難易度と費用を押し上げます。
3)基礎が動いていると“上だけ直しても戻らない”
実は大きいのは、「基礎コンクリート」の被災状況。
倒壊が起きるような揺れでは、上の石だけでなく 基礎コンクリートも影響を受けていることがあります。
基礎がズレたり、沈んだりしていると、いくら上をきれいに組み直しても
また同じことが起きやすい。だから、修理は「見えるところだけ」では済まなくなります。
被災地で起きる「順番が回ってこない」現実

地震の後は、被害が一斉に出ます。
当然、復旧に関わる人手・資材・重機・加工の枠には限りがあります。
その結果、現場で起きるのは、
- すぐに直したくても、職人の予定が埋まっている
- 加工が集中し、部材製作に時間がかかる
- 「危険度が高い案件」から順に対応になり、軽微な修理は後回し
という現実です。
つまり、地震後は「お金があるから早く直せる」とは限りません。
順番が回ってこないことがある。
この経験は、被災地で強く実感しました。
だから事前対策の価値がある
ここまで書くと、怖く感じるかもしれません。
ただ、伝えたいのは“恐怖”ではなく 現実を知った上での備えです。
地震は避けられません。
でも、「揺れた後に倒れてしまうか」「倒れずに留まるか」は、準備で差が出ます。
- 基礎から安定させる
- 部材がズレにくい構造にする
- 水の侵入や劣化を抑え、長期で接着が効くようにする
こうした積み重ねが、地震後の「撤去からのマイナススタート」を避ける可能性を高めます。
最後に:備えとしての“選択肢”を持っておく
今すぐ建て替えを考えていなくても、備えとしてできることはあります。
- 今のお墓が「倒れやすい形」になっていないか、写真で確認する
- ズレ・目地切れ・ガタつきなどのサインを早めに把握する
- 必要なら、補強や据え直しを“今のうちに”検討する
地震が来てからでは、選べる手段が少なくなります。
だから、何もない時に「選択肢」を持っておく。それが一番の安心につながります。
もし今のお墓について「地震が来たら大丈夫かな」と感じる点があれば、全景と気になる部分の写真だけでも構いません。LINEで送っていただければ、危険が出やすいポイントと、今できる備えの選択肢を整理してお伝えします。
















