【文字彫刻】手彫とブラスト彫刻
おはようございます。
但馬、豊岡のお墓と墓石のプロ、おおきた石材店の大北和彦(stoneman-ohkita)です。
日曜日ですが、今日は地元神社のしめ縄つくりをします。
消防団の機関訓練とかぶっておりますが、こちらに来ました。
しめ縄を新しく作って、氏神様を迎えます。
昨日、お墓の引っ越しのための骨拾いのお手伝いをしました。
そこで待っている時間、境内の墓地を見て回って、文字彫刻が気になったので、
その記事を書いてみます。
文字彫刻は、今はほとんどブラスト彫刻ですが、昔は、手彫でした。
今、手彫できる人がほとんどいません。
ですが、今、手彫のお墓の字を見てみると、やっぱり手彫の方が
美しいですね。
細部にこだわった文字彫刻です。
その違いを是非、分かって頂きたいですね。
こちらは、ブラスト彫刻です。
深さはしっかりと深いです。
ブラスト彫刻の良さは文字の輪郭がシャープに出ることです。
この文字もとてもシャープに輪郭が出ています。
でも、いくつか気になる部分があります。
どこでしょうか?
まず、赤で囲った部分。
よく見ると、そこに穴が開いております。
文字の深さがとても深いのでブラスト中に底が見えにくくなって、
このように穴が出来てしまいます。
こうなると、埋めようがないので、全体的にこの深さに揃えるということをしますが、
だんだん深くなって、また見えなくて、また穴が。。。。
ということになって、深くなるばかりでよろしくありませんね。
次に、青線で囲った部分。
向かって左側部分ばかりですが、十分に文字の側面が取り切れてません。
まだ残っているんですね。
逆に、緑色の線の部分は
しっかりと採りすぎていて、えぐれてます。
鋭角に彫ってありますので、輪郭部分が多少弱くなります。
経年すると、欠けやすくなったりします。
このように安定して、彫刻するのはとても難しいですね。
相対的にこのブラスト彫刻は、ある程度熟練した人の彫刻だと思いますが、
深く彫りすぎていて、あるいは底が見えず、こうなってしまったのかもしれません。
私も注意しなければ。。。という自戒を込めて。
こちらの文字は、白の色が塗ってありますが、(おそらく後から塗ったもの)
手彫彫刻の文字です。
一分、輪郭が崩れそうになっていますが、けっこう古いお墓なので、
これは仕方ないのかも。
手彫彫刻は、ノミでえぐっていくので、どうしてもダメージが残り、
古くなると輪郭が崩れてきやすい。
また、小さめのシマが欠損しやすいのが、手彫の欠点ですが、
文字の底が非常にきれいで、美しいのが、特徴です。
ブラスト彫刻でこのような文字底を作るのは極めて難しいですね。
こちらは、崩し文字ですが、手彫の文字です。
底を平のみでさらってあるのがよくわかります。
非常に美しいです。
輪郭もまだ新しいので、問題は全くありません。
この文字は「家」という文字ですが、
この中心の縦画の底、婉曲している部分ですが、
底がとてもよくわかります。
丁寧にノミでさらってあって、素晴らしい文字彫刻ですね。
こっちは、おそらくブラスト彫刻の非常に上手に彫った文字。
これは、普通の手彫よりも深い。
ブラスト彫刻ならではの深さの彫刻ができています。
しかも輪郭にダメージが少ないので、経年後も輪郭が崩れにくい。
ブラスト彫刻でもこれほどの美しい文字彫刻ができます。
この「代」という文字の3画目と4画目の交差の部分。
深さが違いますね。
この部分がブラスト彫刻の雰囲気を残しています。
手彫だとこういう風にはならないですね。
さて、手彫とブラスト彫刻のいろいろな彫刻を見てきました。
どちらの彫刻でも、熟練の彫刻と未熟な彫刻では、
素人の方でもはっきり判別できる違いがあります。
今は、ブラスト彫刻で文字をある程度彫ってから、
底をノミでさらうという
「ブラスト」+「さらい」彫刻という方法もできます。
手彫が今、できる人がほとんどいない現状で、
この方法が一番美しい彫刻方法ではないかと思います。