Q285~青木石(四国・香川県丸亀産みかげ石)はどんな石?
日本広しといえども、
石材産地、と言える場所は限られます。
その中で、最も硬いと言われる「花崗岩」。
その花崗岩がたくさん採掘される場所と言えば。。。
ホントに限られます。
福島県、茨城県、愛知県、岡山県、愛媛県、佐賀県など。。。
有名な花崗岩が採掘される場所は、ホントに限られます。
その中で、昔、兵庫県の御影という地域で、花崗岩が採掘されました。
その石は、石垣に使われたり、記念碑に使われたりして、また比較的大都市神戸、大阪、京都に近かったこともあり、
とても有名になったのです。
で、その石の名前、「御影石」が花崗岩の代名詞になって、
そのまま時代が下り、
今では、花崗岩=みかげ石と呼ばれるようになっています。
なので、実際、御影地域で採掘された石は、
「本御影石」と呼びます。
私は個人的には、「本御影石」とその他の石「みかげ石」と
ひらがな表記で区別しておりますが、まあ、とにかく、
「みかげ石」とは花崗岩の総称、あるいは別称だと
思っていただければ間違いないですね。
ここまで書いて、
お気づきのことありませんか?
そう、
香川県の事。
うどん県と別称される香川県ですが、
実は、日本有数の高級みかげ石の産地なんです。
「庵治石」という石ですね。
日本一、高価な庵治石。
そう呼ばれている石ですが、実際に、高価です。
その庵治石に隠れて、あまり目立ちませんが、
もう一つ、有名な石が採掘されております。
それこそが、「青木石」です。
でも、香川県と言っても、実際は、
香川県の沖、瀬戸内海に浮かぶ「広島」という島で採掘されています。
香川県丸亀市広島町。
丸亀市沖に浮かぶ島です。
丸亀港とはフェリーで結ばれていて、丸亀最大の島だと思います。
もう一つ、瀬戸内海で採掘される、超有名な「みかげ石」である北木石が採掘される
「北木島」とも、非常に近いですね。
その広島で採掘される石、「青木石」といいます。
大和撫子(やまとなでしこ)という言葉、ご存知ですか?
今や死語となりつつあるのかもしれませんが、
非常におとなしくて、清楚な美しさのある日本人女性を指す言葉です。
まあ、今はあまり使いませんが、
この石を見ると、まさしくこの言葉を連想するんです。
強い主張はないですが、
しっかりとした存在感、
そして、静かに佇む姿。
そして、にじみ出る美しさ。
そんなイメージの石です。
(もちろん私の中で。。。)
特に、加工しやすく、なおかつ
粘りがあるので、手加工にも使われます。
そして、一番の特徴は、
石の目が合わせやすいこと。
私がこの仕事を始める以前から、
おおきた石材店では青木石を使ってお墓を作っておりました。
いわゆるほとんどのお墓を自社加工で製作していた時代。
地元の玄武岩に似た石でお墓を作っていた時代から、
みかげ石でお墓を作る時代へ。
その最初からこの青木石は、その加工のしやすさ、
目の合わせやすさ、粘りという特徴が好まれて、
但馬地方各地で使われました。
おそらく、
おおきた石材店で作ったお墓の中で
一番たくさん使った石だと思います。
しかし、
この石は最近、
お墓に使うことは少なくなって来たんです。
このように、美しくて、日本的な石である「青木石」ですが、
段々、中国の石を使うようになってくると、
人気に陰りが見え始めてきました。
一番の問題は、水を吸いやすいこと。
この青木石を含めて、瀬戸内地方で採掘される
庵治石、大島石などの瀬戸内で採掘されるみかげ石は
俗に、「白みかげ石」「青みかげ石」などと呼ばれます。
石のことをあまり知らない人に言わせると、
「白、って、白じゃないでしょ。あえて言えば、ごま塩かな。。。」
「青ではない、よね。絶対青じゃない。」という感想をお持ちでしょうけど、
私たち、瀬戸内のみかげ石をずっと扱ってきた石材店の多くは、
「白」とか「青」と頭につけて、こう呼びます。
そのいわゆる瀬戸内系のみかげ石は
(誰でも分かるように言うとすればグレー系ですね。。。)
水を吸います。
水を吸収します。
これは、どの石が多いとか、少ないとかは、多少ありますが、
花崗岩は水分を吸収するのは、既定の事実なんです。
それが多いか少ないか、だけです。
ただ、この手の(あえてわかりやすくグレー系みかげ石と呼びます)グレー系みかげ石は
水分を吸収すると、色が濃くなるんです。
それはよく分かります。見た目でわかります。
どうしても、この手の石は、仕方ないんです。
そういう性質ですから。
黒っぽい石、色の濃い石は、
色が濃くなってももともと濃いので、分からないだけ、
の場合もあります。
それはそういう性質なんです。
そして、もう一つの欠点と言われる部分。
上の部分でも書きましたが、
加工しやすい、ということは
多少、柔らかいということ。
さて、ここで、あえて、声を大にして言いたいのですが、
あなたの考える「柔らかい」と
私の考える「柔らかい」は
同じではありません。
おそらく、石のことをあまりご存知ではない
あなたは、こう考えるかもしれません。
「硬い石って、スチール缶くらいの感じで、
柔らかい石って、アルミ缶みたいなものでしょ?」って。
でも、私の考える硬さの違いは、そうではありません。
「硬い石って、スチール缶の厚みが1ミリのやつで、
柔らかい石って、スチール缶の厚みが0.95ミリのやつ」
と言えば、わかりますかね。
つまり、手で触ってわかるレベルの違いではないってこと。
石を加工するときに使う研磨材、人造ダイヤモンドを含んだ研磨材を
使用して、加工するんですが、その研磨材の摩耗する速さが
気持ち早いか、遅いかという程度。
そして、さらに言うと、
硬い石というのは、相対的に脆くなります。
カドが欠けやすくなる、ということ。
逆に、柔らかい石というのは、相対的に粘りが出てきます。
カドが欠けにくい、ということ。
(相対的になので、必ずではありませんが。。。)
そして、最後に、
これは、この石の果たして弱点なのか、
これは、欠点と呼んでいいのかどうかは、分かりませんが、
もう一つよく言われる部分があります。
「青木石は10年くらい経過すると、角が黄色く変色し出すんだよね。
しかも、変色しない青木石もあるんだよね。。。」
(某、石屋さんの声)
これは事実です。
黄色く変色し始めるお墓が確かにあります。
変色しない青木石のお墓もあります。
(この現象も、実物を見てもらわないとわかりずらいとは思います。
黄色のペンキで塗ったような変化では決してありません。
気持ち、色が。。。程度です)
原因は、どうなのか?
専門家の石屋さんにもいろいろな意見があります。
「花粉が入り込んで黄色くなってると思う」
「いや、磨きの光沢を出す工程で熱を加えすぎて、こうなるんだよ」
「排ガスとかそういうものが変色させるんだと思うよ」
など、いろいろな原因が言われます。
が、どちらにせよ、共通するのは、
10年くらい経過すると出やすい。
場所によっても出やすい場所と出にくい場所がある。
また、同じ場所でも出る石と出ない石がある。
ここまで見てきて、感じるのは、
原因は、石ではないのではないか、ということ。
例えば、大島石でも、こういう現象は出ます。
なので、青木石特有の現象ではない、気がしてます。
さて、いろいろな欠点をお伝えしてきましたが、
青木石は、その欠点を補って余りある魅力のある石なんです。
具体的に上げてみましょう。
ズバリ、
上の写真、青木石はどれでしょうか?
。。。
。。。
分かりますか。
正解は、
全部青木石です。
青木石と一言で言っても、
いくつか採掘している場所があって、
色々な種類の石が採れます。
向かって左から、
◇青木石(白口)~白くて、一番変色が少ないと言われています。
◇青木石(青口)~一番メジャーな青木。ザ・青木という石ですね。
◇青木石(黒口)~やや濃い目の青木石。黒い青木ということで、希少な石です。
◇青木石幻の黒~非常に希少価値のある青木石。ほとんど採れません。
このように4つ目はほとんど採れませんし、当然市場に出ておりませんので、
石屋さんもほとんど知らない石だと思います。
でも、同じ青木石と言っても、ホントにいろいろありますし、
よく見てください。
とってもきれいですよね。
押しが強いわけではなく、
かといって、
地味でもなく、
しっかりと主張はあって、
でも、押しつけがましくなく、
そういう石、青木石です。
さて、石の良さを伝える記事なので、
最後に、この石の最大の魅力をお伝えしないといけません。
弘法大師、空海。
言わずと知れた、日本史上最も有名な仏教人であり、
真言宗の開祖ですが、
若いころ、修行した四国各地の寺院が
今の西国八十八個所となっているのは有名ですが、
その弘法大師が修行した地がここ、広島にもあるんです。
心経山という山の頂上には、大師堂と祠があります。
そこで若いころの空海が修行したと言われています。
その心経山のふもとで実は、青木石は採掘されています。
なので、この石は俗に
「弘法大師の石」とも呼ばれています。
うちは真言宗だという人、
弘法大師を崇拝している人、
西国巡礼をしたことのある人、
西国巡礼に興味ある人、
青木という苗字の人
青木という土地に住む人は
この石をお墓に使ってみるのもあり、なのかなと
思いますね。
そして、この石を実際に楽しみながら見れるのが、
「いろは石」です。
この広島出身の書道家、藤本玄幽(本名 正樹)が島の観光祈願のために製作したものです。
45基もの石碑に作者独自の作風である、錦文字を用いて名言を遺しています。
なぜ、45基なのかというと
「いろはにほへと。。。」とその頭の文字を使って文字を刻んであるからです。
全部で45基というわけですね。
全て見て回ると、全島一周できるシステム。
非常に広島らしい観光名所ですね。
私も一度はぜひ、全部見ておきたいものです。
さて、ここまで書いてきました。
青木石の良い点、悪い点。
いかがでしたか?
あなたは、青木石が気に入りましたか?
それとも、
やっぱり、青木石は選択肢から外しますか?
確かに欠点はあります。
この石には。
でも、それを補って余りある魅力もある石なんです。
ところで、
突然ですが、
人を好きになった人には良くわかりますが、
好きになったら、あばたもえくぼ、
欠点も魅力に見えると言います。
逆に、そういう点が好きになる原因になったりすることもありますよね。
どこにも欠点がなくて、
完全無欠の美人には、あまり魅力を感じない。
逆にそれ以外は大したことないのに、
ここだけは凄く魅力的。
なので、好きになったってことないですか?
「人間と石を一緒にするな」っておっしゃる
あなたの意見もわかります。
でも、ほんとにそうでしょうか?
瀬戸内の銘石、たくさんありますが、
その中で、
キングオブみかげ石の「庵治石」
私の大好きな石、「大島石」
そして、この「青木石」も
どの石も、欠点を持っております。
でも、
その欠点を差し引いても、
それでも、こっちの方がいい、と言える魅力を備える石なんです。
どれも。
いや、逆に
その欠点があるから、余計に魅力的だ、って
言ってしまってもいいのではないか、と思うほど、
魅力がある石です。
私の父のお墓は
青木石で作りました。
一番たくさん建てていた石、青木石で。
そして、
その父と一緒に、青木石を磨き、建てる手伝いをしてくれていた
叔父さんの家の墓も青木石で建ててます。
国内産の石の良さをたくさん持っている石
青木石。
これからもたくさんのお墓に建てていきたい石ですね。
ちなみに依然、こういう記事も書いておりました。
完全に忘れておりましたが、けっこうおもしろい…
〇 吸水率 0.239 %
〇 圧縮強度 117.25 N/m㎡
〇 岩石分類 花崗岩
※ 青木石に関しては、おおきた石材店では、ある独自の方法にて、水分の吸収を遅らせる方法を施工させていただいております。
おおよそ、5年から10年程度、水分の吸収を遅らせる効果があるのではないかと、考えます。