白状します。
自分の家のお参りで墓地に行っても、私は他人の家のお墓が目に入ってしまいます。

◇ お墓ディレクター1級:お墓のプロの証、1級取得者は全国で2桁
◇ 墓地管理士:お墓、納骨堂、永代供養墓の法律の専門家
◇(一社)日本石材産業協会正会員、兵庫県支部理事
◇ 石材加工技能士1級:石の加工の技能を表する国家資格
◇ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
◇ 「地震に強いお墓」施工店
おおきた石材店
昭和の初めより三代続く、兵庫県豊岡市の小さな石材店。震度7の地震でも倒れなかった「地震に強いお墓」と特許技術「雨漏りしないお墓、信頼棺」の正規代理店。百年後に残るお墓を作っています。

線香をあげて手を合わせて、さて帰ろうと振り返った瞬間、視界の端の「あのお墓、ちょっと傾いてないか」が気になって仕方ない。通路を歩けば、両側のお墓の目地の状態を無意識にチェックしている。家族には「仕事は置いてこい」と言われますが、これはもう職業病なので治りません。
せっかくなので今日は、その職業病を皆さんのお役に立てようと思います。石屋が墓地で「おっ」と足を止めるポイント——つまり、お盆参りのついでにご自身のお墓で見ておいてほしい場所の話です。
先に大事なことを言っておくと、派手に見えて実は心配いらないものと、地味で気づかれないのに要注意なものがあります。順番に行きます。
その1:目地の切れ(地味だけど、いちばん見てほしい)

石と石の継ぎ目に入っている白っぽいライン、あれが目地(コーキング)です。
ここが黒ずんで痩せていたり、ひび割れて隙間が空いていたら、寿命が来ています。目地は施工から10年、20年で切れてくる消耗品です。
なぜ石屋がここを一番見るかというと、切れた目地は水の入り口になるからです。継ぎ目から入った水は石の内部や納骨室へ回り、冬に凍って膨らめば、石を内側から押します。お墓の不具合の多くは、たどっていくと「水がどこから入ったか」の話で、その入り口の筆頭がここなんです。
チェック方法は簡単で、竿石と台石の継ぎ目、外柵の角の継ぎ目を近くで見るだけ。黒い線状の隙間が見えたら、写真を撮っておいてください。
その2:傾き(遠くから見るとわかる)
お墓の正面に立つと、意外と傾きには気づきません。通路まで下がって、隣のお墓の縦のラインと見比べるのがコツです。
墓地は山の斜面や盛土に造成されていることが多く、長い年月で地盤が不均等に沈むと、お墓ごとゆっくり傾いていきます。数ミリ〜1センチ程度のずれなら経過観察でいい場合も多いですが、傾きは進行するもので、自然に戻ることはありません。
石屋の目で「おっ」となるのは、傾きそのものより石と石の間に楔(くさび)状の隙間が見えるときです。上の石と下の石が別々の方向にずれ始めているサインで、こうなると地震のときに動きやすい。見つけたら、これも写真を。
その3:小物と戒名碑のぐらつき(触ればわかる)
花立、香炉、拝石。お参りのついでに、軽く手で揺らしてみてください。カタカタ動くようなら、据え付けのモルタルや接着が切れています。日常では実害が小さいのですが、地震の際に真っ先に落ちて割れるのがこの小物類です。
そして、意外と多いのが戒名碑のぐらつきです。足の高さが左右で微妙に違っていて、押すとカタンと揺れる。実はこれ、故障ではなく理由があります。戒名碑は、戒名を追加で彫るときに石材店が持ち帰る前提の石なので、もともと接着せずに置いてあるのが普通なんです。おおきた石材店では、新しく建てるお墓は戒名碑の固定を標準にしていますが、昔からあるお墓の戒名碑は固定されていないものと思ってください。お参りのときに手をついたり、お子さんが寄りかかったりする場所ではない——これだけは覚えておいてほしい注意点です。
ちなみに耐震の話をすると、ホームセンターで売っている「耐震パット」のような貼り物は、残念ながらお墓にはほぼ効きません。石の重量に対して役者が足りないんです。きちんとやるなら石材専用の弾性接着剤とソフトファスナーを使った施工になります。この話は長くなるので、また別の記事で。
その4:納骨室の水(見えないけれど、サインはある)
これは外から見えない分、一番気づかれない項目です。
納骨室(カロート)に水が溜まっているお墓は、実は珍しくありません。地下水位の高い墓地や、目地の切れたお墓では、骨壺が水に浸かっていることもあります。
外から確認できるサインは、拝石まわりの苔と湿りです。他が乾いているのに拝石の縁だけいつも黒く湿っている、夏でも苔が元気——そういうお墓は、中に水気がある可能性があります。断定はできないので、気になる場合は蓋を開けての点検になります。
逆に、心配しなくていいもの
職業病ついでに、「見た目は悪いけど慌てなくていいもの」も挙げておきます。
石の色ムラや白っぽい染みは、多くが水を吸った跡や経年の水垢で、構造には関係ありません。表面の細かいツヤ引けも同じです。見た目の問題と構造の問題は別で、緊急度が高いのは圧倒的に後者。派手な染みより、地味な目地の隙間のほうがずっと大事です。
お盆は、年に一度の点検日でもあります
まとめると、お盆参りのついでに見てほしいのはこの4つです。
- 継ぎ目の目地に隙間がないか(近くで見る)
- 傾いていないか(通路から隣と見比べる)
- 花立・香炉・戒名碑がぐらつかないか(軽く触る。戒名碑は接着されていないのが普通なので、強く押さない)
- 拝石まわりだけ湿っていないか(苔と黒ずみ)
家族が揃うお盆は、お墓の状態を複数の目で見られる、年に一度の点検日でもあります。「あれ?」と思うところがあったら、スマホで写真だけ撮っておいてください。
但馬・豊岡近辺のお墓でしたら、その写真を送っていただければ、修理が必要な状態か、経過観察でいいかの見立てをお伝えします。何でもかんでも工事を勧めたりはしません——正直なところ、「これは様子見で大丈夫です」とお答えする件数のほうが多いくらいです。
それでは皆さん、よいお盆参りを。私は今年も、自分のお参りそっちのけで隣のお墓の目地を見ていると思います。


















