兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー

それでは安心できない「お墓の固定金具」

    
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それでは安心できない「お墓の固定金具」

少し秋が深まってきた兵庫県豊岡市です。急に涼しくなってきて、やっと長い夏(のような暑い季節)が終わったのかな、と思います。長かったですね。。。

石材業界で気になることがあります。

地震が多いことで有名な日本。毎年、毎月必ずどこかで地震があり、その被害の映像が流されています。地震でお墓が倒壊している様子も、テレビで放送されたり、YouTubeでもアップされていて、多くの人が目にしていると思います。

「少しでも被害が少なく済んでほしい」というのはお墓の持ち主の願いであり、「少しでも地震で被害が出ないお墓を建てたい」というのが私たち石材業界の願いでもあるはずです。

そうであるなら、いろいろな地震対策を最新の最も効果の高い方法で施工するのが、当たり前ですよね。。。

でもそれが当たり前ではないようなのです。

固定金具は日々進歩しています

「固定金具」とは、お墓の石と石、時には、石とコンクリートを固定、つまり動かないように固めるための金具です。

写真は一番上が最新の固定金具。
見るからに丈夫ですよね。厚みも通常のものより厚く、しっかりしています。人力ではまず曲がらないでしょう。

その下が5~6年前まで私も使っていた固定金具。
曲げた部分に少しくぼみが作ってありますよね。それが多少、曲がりにくい、ということのようです。気休めかもしれません。

上から3番目がそれよりさらに前の固定金具です。こちらになると、ただの板を曲げて、穴を開けただけなので、一番下のように簡単に変形します。
※ 一番下とその上(上から3番目)は同じ金具です。

ちなみに、全て金具はステンレス製です。これよりさらに昔、おおきた石材店なら20年前くらいなら、鉄製の金具も使っていました。

それがこちら。

古いお墓をリフォームした際、出てきた金具です。おおきた石材店の建てたお墓ではないのですが、リフォームした際、出てきました。さすがにこの鉄製の金具は今の石材店さんは使っていないだろうと思いたいですが、実はごく稀に使っている石材店さん、いらっしゃるようです。

どうしてわかるのかというと、道具屋さんが売っているから。売っているということは買っている石材店がいるということ。つまり使っている石材店さんがいるということです。

これがリフォームした際の写真です。この写真は5年程度昔の写真ですが、当時はまだ現在の金具の知識がなかったのと、最新の金具を知らなかったので(まだ売ってなかったのかも。。。)一つ古い金具を使用しています。

で、リフォームした際、取り付けた金具の上に穴が開いているのが、古い鉄製の金具のアンカーの後です。分かりにくいですが、下の方にも鉄製のボロボロになった固定金具の残骸があります。

固定金具も日々進化しているので、常に最新情報をチェックし、自分の情報をアップデートするべきなんですが、いまだに鉄製の金具を使っている石材店さんがいらっしゃるのが、なぜだが分かりません。

鉄製の方が安いから? でも安いから使うってのは、全く本末転倒ですよね。

板を直角に曲げただけ、なら、

ちょっとした力が加わっただけで、こうなってしまいます。分かりますよね。

人間の力でもこうなってしまうんですから、自然の力の前では全く無力です。

アンカーボルトはさらに深刻

お墓を建てる時使われているアンカーボルト。先ほどの固定金具を石に、コンクリートに固定するために、穴を開けて、そこに差し込んでボルトを締めて、固定金具をがっちり固定する、という極めて大事な役割です。ぶっちゃけ言うと、どんなに固定金具が強固でもアンカーボルトが貧弱だと、全く意味をなさない、というものです。

ASアンカーボルトと呼ばれています。昔からよく使われていました。おおきた石材店でも20年以上前のものはこちらを使っていました。その頃、まだ父が現役の頃はこれが当たり前でしたね。

ステンレス製と鉄製があります。実はこれが曲者で、すべてがステンレス製、鉄製ではないのです。

鉛の部分があるのです。これが曲者で、後ろのステンレス製の部分がねじを締めることで鉛の部分に入り込んで径が太くなり、空けた穴の内側に密着して、その摩擦力で固定されるという構造なのですが、非常に緩みやすいのです。簡単に外れます。穴を空けた材料が木材とか樹脂とか軽量コンクリートとかなら柔らかくて密着しやすく具合がいいのかもしれないですが、石は極めて硬いので、どうも緩みやすい傾向があるようです。ボルトを緩めずとも、バール等で簡単に緩んでしまうのです。これは経験則からも明白ですし、他の石材業者さんに聞いた話からでも間違いありません。

こちらの写真は友達の石材店さんから頂いた写真なんですが、ASタイプのアンカーボルトがことごとく抜けています。全て簡単に抜けたよ、とおっしゃっています。

説明としては、難しいのですが、石の中では緩みやすいと理解していただいていいと思います。

この部分に見えている筒のようなものは、実は。。。

これが見えているんですね。これは鉛の部分の摩擦力が弱まって、ねじが緩み、手で抜き取ってしまったのです。だから、後ろの部分と鉛の部分は石の中に残り、ボルトだけ抜けてしまっていたんです。

緩む工程は詳しくはわかりませんが、これまで古いもので緩んでなかったものがなかったという経験則と他の石材店さんの評判でそれは間違いないです。

で、現在はこのASボルトは使用していませんし、使用すべきではないと考えます。

で、今使用しているのはこちら。

最新のアンカーボルトです

ウエッジ式と呼ばれるアンカーボルトです。こちらは完全にステンレス製です。すべての部品がステンレス製です。こちらは、建築業界でも重量物の固定に使われているものです。

石材業界では8ミリのものが多く使われていますが、私は10ミリのものを使っています。太いとそれだけ強度も高いから、ですね。

構造はとういうと、ボルト自体を叩いて打ち込むというスタイルですが、アンカー用の穴のサイズがはっきりと指定されています。この10ミリタイプは10ミリの下穴でないといけません。以前実験したのですが、11ミリだとゆるくて締まりません。10.5ミリだと締まるのですが、なんだか不安ですよね。

更にその穴を空けるドリル、刃がちびって空ける穴が9.5ミリになると逆にアンカーを打ち込めなくなります。途中までしか入らないという事態になります。あまり使い古されたドリルの刃は使えないというリスクもあります。

たぶん全てステンレス製なので、緩むということはないと思われます。現在考えられる最高の性能だと思われます。

私は「サンコーテクノ」という一流メーカーの製品を使わせていただいております。結構高額なんですが、安心感が違います。

というわけで、このサイトしか売っていないステンレス製の固定金具と

一流メーカー製の10ミリのウエッジ式アンカーボルト(写真上のものです)で石を固定しています。

このタイプだと、一度打ち込むと石を割らない限り、このアンカーを全て取り出すことは不可能です。ナットを緩めてボルトとナットを分離する以外、どうしようもないのです。

まとめ~最新の製品を使う理由

どうして最新のものを使うのか? という疑問を持つ人がいるとは思えないのですが、そういう疑問に敢えて答えると、「こういう製品はいざという時、役に立たないのでは、やる意味がないから」です。

〇 鉄製で錆びていて、地震の時、外れてしまった。
〇 時とともに緩んでいて、抜け落ちていた。
〇 細いアンカーだったので、強い地震の力に耐えられず、抜け落ちてしまった。
〇 固定金具が曲がって伸びてしまった

こういったことが起きてしまったら、何も対策していないと結果は同じなんです。
地震とは自然の力ですから、完璧な対策はできませんし、そんなものはないのでしょう。それは理解していますが、今できるベストを求めることがこういった地震対策には最も大事なんだと思います。

大きな地震に遭われた地域にお住いの方なら、身をもって体感されていると思います。
お墓が地震に遭ったら、ほんとに大変だということを。

【追記】抜けやすいアンカーボルトと抜けにくいアンカーボルトの見分け方

外見を見たら簡単に判別できます。

上のASアンカーはこの面(赤丸した部分)が見えるんですが、表面がつるんとしています。

一方、抜けにくいウェッジ式アンカーは下の写真。

同じ見えている面は真ん中にボルトの頭が見えています。

石から見えている面を見たら、判別可能です。

上の写真の新しいアンカーは頭からボルトが出ているので、抜けにくいウェッジ式アンカーです。

ASアンカーは実際に施工してある写真は今手元にないのですが、上の写真。下の二つのアンカーはASアンカーです。表面がつるんとしていますよね。この部分を見たら、どちらがどちらか一目で分かります。

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