兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー

地震に強いお墓の建て方⑦~耐震ボルト

    
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地震に強いお墓の建て方⑦~耐震ボルト

地震に強いお墓も奥が深くて今回第7回目。そろそろ終盤に近付いております。

◇兵庫県豊岡市のお墓のアドバイザー大北和彦です

兵庫県豊岡市のお墓と墓石のアドバイザー、おおきた石材店です。

☑ 兵庫県北部で唯一の「お墓ディレクター1級」
☑ 雨漏りしないお墓「信頼棺®」正規代理店
☑ (一社)日本石材産業協会常任理事

おおきた石材店はお墓のことを全く知らない人にも、お墓を建てる時に大事なことをわかりやすくお伝えすることを第一に考えて情報発信しています。

前回、接着剤の話を2回に分けて投稿しましたが、接着剤、現在はとても強力で性能もよく、しっかり正しく接着されていればそうそう問題はないのですが、大きなお墓だとか、和型の背の高いお墓などはそれでも強い地震の揺れが来ると、倒れる可能性があります。

そこでよく利用されているのが、【耐震ボルト】ですね。

これが免震ボルトというか、免震棒ですね。ボルトではなさそう。

この赤線の枠内の金属の棒が俗に「耐震ボルト」とか「耐震棒」と呼ばれるものです。

石に穴を開けて、金属製の棒を差し込み、上の石にも穴を開けて、そっちにも差し込み、接着して、固定しようというものです。ただ、これも様々なルールがあり、正しい方法をしないと、逆に「しない方が良かった」なんてことにもなりかねない、わけです。

上の写真も実は2つのルールを守っていない可能性があります。(私なりのルールですけどね)

耐震ボルトの使い方の4つのルールをご紹介します。

①ただの棒ではなく、ボルトなどの異形物にすべし

上の写真はただの棒です。表面がつるっとしていますね。これだと接着剤とこの棒との接着力が十分になりません。抜けやすいということです。一番いいのは「ボルト」にすること。

こういうボルトの形状だとしっかりと接着剤で固定していると抜ける可能性がほとんどないです。これは大きな違いです。このボルトのようにねじを刻んであるものを使用するべきです。
ねじでなくても、表面が凸凹していればいいわけですが、費用的にこのねじ切りが一番ポピュラーで、安価に手に入るので、これを使っています。

②耐震ボルトは下の石に固定するのではなく、上の石に固定

写真の耐震ボルトは”下の石”の上の面に固定して、その上に”上の石”を下ろして施工してあるようです。でもこれだと、”上の石”に耐震ボルトをしっかり接着剤で固定するのが非常に難しくなります。

耐震ボルトの見えている部分をよく見ると、下の方は接着剤が付着しているように見えますが、先の方(耐震ボルトの先の方)はほぼ接着剤が付いていません。施工した時のままのきれいな状態に見えます。これは明らかに施工不良です。

”上の石”の下面に耐震ボルトを固定して建ててあったお墓は福島の地震視察に行ったときでもほとんど見ませんでした。ということは”上の石”の下の面に耐震ボルトを固定したお墓は倒れにくい可能性がある、ということですね。

その中でも数少ない施工例の写真が下の写真です。

下側にボルトを固定してあります。しかし、いくつか問題がありそうです。まず、接着剤が少ない。これは以前に説明しましたので割愛します。

耐震ボルトではなく、異形棒、凸凹のある棒です。それはいいのですが、見た感じ錆びついていますね。まず、錆びているというのは、空気や水分に触れているということです。つまり、しっかりと接着剤を使ってなかったので、空気や水分に触れて、錆びてしまったということです。接着剤が少ないための施工不良の可能性があります。石の裏面の接着剤も少ないのでそれはなんとなく予想ができそうです。接着剤は”けちる”とほんとに意味がないですね。

さらにもう一点。

③耐震ボルトは鉄製ではなくステンレス製のものを使うべし

まず、空気に触れると錆びる鉄だと上の写真の様にどんどん錆びてきます。穴の中に入っているので、錆びると鉄はてどんどん膨張していきます。ですが、穴のサイズは決まっているので、その膨張力で石を割ってしまう可能性もあります。また、その錆、つまり酸化した鉄の錆が浸透して、石に悪影響を及ぼす可能性もあります。もともと石は鉄分を含んでいるので錆びる可能性があるのですが、錆が出るとほとんどお墓としては良くないことの方が多いのです。

この写真は耐震ボルトが入っていて、良かったのか、悪かったのか微妙な写真です。倒れているお墓の黒い石の部分はおそらく耐震棒が入っているので、分離していないようです。ただ下の白い石との間が施工不良だったらしく、横にずれて、隣のお墓に倒れてしまったようです。隙間の空いた部分に耐震ボルトらしきものが見えます。

これを補修するのは極めて大変です。下手な方法をすると隣のお墓も倒してしまいます。

上の写真は見えていないですが、ほぼ間違いなく「耐震ボルト」が入っています。ですが、その耐震ボルトだけ有効に働いたけど、それ以外の接着剤が施工不良かどうかで分離してしまい、上の石自体が回転してしまったようです。

これだけしっかりと目地シールもしてあるにもかかわらずこのように接着剤が分離して、回転してしまったのはおそらく接着剤の施工不良の可能性があります。

④耐震ボルトの長さが短すぎてはダメ

下の面に耐震ボルトが付いています。また接着剤もしっかりついているようですが、ボルト自体が短すぎます。この程度のボルトだと入れない方がいいのかもしれません。抜けてしまったら、逆に元に戻ることはほぼなく、この飛び出たボルトが悪影響を及ぼし、間違いなく倒れてしまいます。

このお墓の場合、もっと大きな原因があって、石の固定にモルタルのようなもので止めてありますが、それでは倒れてしまいます。樹脂モルタルを使うか、設置する面をしっかりと再加工して平面にして、接着剤等で施工しなおせば、おそらく結果は違ったのかもしれません。

まとめ

今回は耐震ボルトの話でした。おおきた石材店では基本耐震ボルトはしてきませんでした。あまり効果がないような気がしていたからです。でもこれからは耐震ボルトは併用して施工しようと思っています。正しい施工方法をすれば、耐震ボルトはかなり有効だと福島県に行って教えてもらい、感じました。

施工の方法さえ間違わなければ、本当に強い味方となるはずです。

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